Management Column基準地価下落の経営・税務・会計への影響
国土交通省は、9月29日、2020年7月1日時点の基準地価を発表しました。上昇した地点と下落した地点があるものの、全国の全用途平均ではマイナス0.6%であり、3年ぶりの下落となりました。新型コロナ感染拡大の影響で、都市部の訪日客需要が消え、都心商業地を中心に地価が下落したことが要因と分析されています。
基準地価は、あくまで過去の統計ではありますが、経営・税務・会計に影響してきます。今回の基準地価の下落から、今後の経営環境等について考えていきたいと思います。
今後の地価はどうなる?
今年の基準地価は、昨年後半と比べて、新型コロナ感染拡大の影響が色濃く出ているといえるでしょう。商業地の1月1日時点公示地価との比較でみると、昨年7月から今年1月にかけては2.5%上昇していますが、1月から7月にかけてはマイナス1.4%と下落しているようです。住宅地についても、0.8%上昇していたのがマイナス0.4%となっています。
テレワークの普及が進み、今まで都心に集中していた就業者が、徐々に郊外や地方に分散してきています。都心オフィスの需要減少も地価下落の大きな要因の1つと分析されています。しかし、就業者の都心から郊外・地方への分散は、住宅地の地価を上昇させるほどの勢いはなく、全体として地価は緩やかに下落していくことが予想されています。
一方、新型コロナ感染拡大で、地価が上昇傾向にある地点もあります。インターネット通販等、物流の需要が増えたことにより、高速道路の近く等の物流に便利なアクセスのよい工業地の中には、地価が11%から12%上昇している地点もあります。今後、コロナ禍を乗り切り日本経済を立て直すことができたら、地価もまた上昇に転じるとの予想もされています。
経営に与える影響
基準地価下落影響を大きく受けるのは、やはり不動産業者といえるでしょう。基準地価の下落は過去の統計ですが、市場心理が働くため、不動産の価額が下落していくことが予想されます。一方、資金に余裕がある企業にとっては、良い物件が安く手に入るチャンスでもあるともいえるでしょう。
一般の企業で不動産を所有している場合には、土地の含み損が増加することになります。土地の売買をしなければ影響は少ないと思われますが、土地を担保にした融資枠が減少する可能性もあります。
税務・会計に与える影響
基準地価が下落したとしても、法人税法では原則として、資産の評価替えによる損益を認めていません。土地の含み損を計上した場合には、申告時の加算調整が必要になります。土地は償却資産ではないので、含み損を計上した場合には全額否認となります。建物等の償却資産については、償却費として損金経理した金額のうち償却限度内であれば損金として計上することが可能です。
また、基準地価が下落することは、土地の所有者にとって、固定資産税・相続税の評価額に影響し、税金が安くなることが考えられます。土地の基準価格は、会計事務所にとっては様々な評価額に関係してくるので、要チェック事項です。