Management Column少額減価償却資産の損金算入制度の見直し
ゴールデンウィークも終わり、会計事務所では休業中にできなかった業務や3月決算に向けた業務で、忙しい季節といえます。5月が終われば繁忙期も終わるので、あと少し体調に気を付けながら頑張っていきましょう。
令和4年度の税制改正で、少額減価償却資産の損金算入制度の見直しがあったことはご存知でしょうか。今回は、この見直しについての改正内容をまとめました。
いわゆる少額減価償却資産の損金算入とは?
会計事務所の実務の中では、消耗品などに30万円以上のものがないかどうかチェックしています。これは、少額減価償却資産の損金算入制度があるからです。まずは、この制度がどのようなものであるのか振り返ってみましょう。
使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満のものは、少額の減価償却資産となり、帳簿上で費用に計上した場合に税務上でも損金とすることができます。金額をみると、10万円未満が基準となっています。これには特例があり、中小企業者等が、事業用に取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、取得価額相当額を損金とすることが可能(1事業年度で300万円まで)となっています。この特例は期限付きなのですが、その期限は延長され続けています。ほかにも20万円未満のものについて、3年間の均等償却が認められる一括償却資産の損金算入制度もあります。
したがって、結果的に中小企業者等は、300万円までは取得価額30万円未満の減価償却資産を、取得した事業年度に全額を損金とすることが可能なのです。
少額減価償却資産の令和4年度の改正
少額減価償却資産について令和4年度に改正が行われたました。この改正は、今まで会計事務所で当たり前のように行っていた処理に影響する場合もありますので、しっかりチェックしておきましょう。
今回の改正では、少額減価償却資産の対象から貸付用のものが除外されることになりました。ただし、貸付けが主要な事業として行われる場合は除かれます。10万円未満、20万円未満、30万円未満の減価償却資産の損金算入制度の全てで除かれるため、主要な事業として行われていない貸付用の資産は、金額がいくらであっても通常の減価償却で損金算入を行うことになります。
なお、この改正は、令和4年4月1日以後に取得する資産について適用されます。
改正の趣旨と会計事務所業務への影響
この改正は、近年になって、少額減価償却資産の対象となる一括経費計上が可能なドローンや建設現場の足場を大量に購入し、リース当初に多額の費用を計上する節税方法が目立つようになり、このような節税を防止するためです。ただし、主要な事業として行われていない貸付用の資産のみが除外となるため、主要な事業として行われている場合、つまりリース業者などは今までどおりです。
会計事務所では、30万円未満の資産として費用化処理をしたものについて、購入した資産が自社で使っているものなのか、貸付用のものなのかをチェックしなければならないでしょう。