Management Columnさまざまなウクライナへの支援方法と税金上の優遇制度
ウクライナの危機に対して、世界中で支援の動きが広がっています。世界経済が不安視され、コロナ禍も収束していませんが、さまざまな知恵や努力で平和で安心できる豊かな社会を目指すことができたらよいと思います。
日本で個人や企業ができる支援には、各自治体で設置された募金箱の利用や、ふるさと納税の枠組みを利用して自治体へ寄付することなどがあげられます。支援にもさまざまな形がありますが、「支援したい」という気持ちは実際に支援できるかどうかを問わず、すばらしいものです。この気持ちを大切にするために、疑いなく寄付を行うのではなく、支援方法の種類や実際の資金使途の情報を入手し検討することも必要なのではないでしょうか。会計事務所スタッフとしては、税制上の制度や問題点なども把握しておきたいところです。
法人が寄付する場合
法人が寄付を行い経費となることを無制限に許容すると、税金対策のために無制限に寄付が行われる可能性があります。そこで、法人税法では寄附金のうち損金に算入できる金額について一定の制限を設けています。寄付する団体やその内容によって寄附金を分類し、その分類によって異なる計算を行わなければならず、複雑な計算となります。とはいっても申告ソフトを利用した場合には、分類ごとに金額を入力すれば自動的に計算してくれることが多いです。
「国又は地方公共団体に対する寄附金」と「指定寄附金」に分類できるものは、その支払額の全額が経費となります。「指定寄附金」とは、赤い羽根募金や日本赤十字社への寄付で財務大臣の承認を受けたものなどが該当します。「特定公益増進法人等に対する寄附金」に分類される一定の公益法人などに対する寄付と、「一般の寄附金」に分類される町内会や政治団体、宗教法人などへの寄付などは、損金算入限度額があります。
国税庁 寄附金個人が寄付する場合
個人が認定NPO法人や公益社団法人などに寄付した場合には、寄附金控除(所得控除)と寄附金特別控除(税額控除)のうち、有利な方を選ぶことができます。
ふるさと納税によるウクライナ支援が話題となりましたが、ふるさと納税は地方自治体への寄付にあたるので、所得税法上は所得控除となります。この場合、通常のふるさと納税と同じ扱いで、所得金額による上限はありますが実質負担額で2,000円で寄付することになります。
国税庁 寄附金を支出したとき支援団体に対する寄付とふるさと納税による寄付
寄付する団体により、税法上の違いは異なります。その他にも、寄附金額の使途、手数料などに違いもあります。公式ホームページなどで情報を得ることをお勧めします。
例えば、日本ユニセフでは公式ホームページで、どのような団体かの説明や財政報告が掲載されています。税制上の優遇措置についてもていねいに説明されています。このように情報公開がしっかりされていると、どの支援団体を通じて寄付をするかの判断に役立ちます。善意を利用した詐欺による被害を防止するためにも、情報を得ることは大切です。
ふるさと納税を利用したウクライナへの支援は、ふるさと納税ポータルサイトを利用して気軽に行うことができます。実質負担額2,000円というのが大きな魅力です。しかし、ふるさと納税の目的である「ふるさとの支援」であるかどうかという点や、地方自治体の負担が増えることにつながる点が疑問視されています。ふるさと納税制度の在り方が見直される可能性も、頭においておきましょう。