Management Columnフリーランスという働き方
フリーランスと呼ばれる働き方が増えています。ランサーズ株式会社の調査発表(2021.11.12)によれば、「広義のフリーランス」の人口は1577万人(※)にも達しています。調査を開始した2015年と比較して、約640万人も増えているそうです。ということは、フリーランスを活用する企業も増えているはずです。
※「フリーランス」は法令上の用語ではないため、確立した定義がありません。調査機関ごとに定義が違っています。2020年の内閣官房「フリーランスの実態調査結果」では、フリーランス人口を462万人としています。
発注側に対して立場が弱い
そんなフリーランスですが、個人で業務を受注して生計を立てるという性質から、多くが発注側に対して弱い立場に置かれています。企業に雇用される労働者ではないため、労働基準法などの労働法は適用されません。したがって、取引上の不公平や不利益を被ることも少なくありません。内閣官房「フリーランスの実態調査結果」では、「収入の少なさ」と「取引先とのトラブル」が大きな課題として挙げられています。
フリーランスの保護については、すでに「下請代金支払遅延等防止法」「独占禁止法」などがありますが、それらでは対象外となるケースも多くありました。そこで、2021年3月には、内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の4省庁の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。それでも上記のような課題の解決には至りませんでした。
一方で、日本政府は「働き方改革」の一環として、兼業・副業に加え、フリーランスを推奨する立場です。フリーランスの保護に実効性を持たせるためには、この問題についての新しい法律が必要になりました。
5月12日、「フリーランス新法」公布
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、1年6か月以内(2024年11月まで)に施行されます。「特定受託事業者」とは、個人や一人会社という立場で業務委託を受ける事業者のことです。「フリーランス=個人事業主」という思い込みは禁物です。なお、委託者の定義も定められています。
「業務委託」については、「事業者がその事業のために、他の事業者に物品の製造(加工を含む)または情報成果物の作成を委託すること」「事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること」と定義されています。業種が限られているわけではないので、零細事業者の多くが受託事業者に該当することになると考えられます。
取引の適正化、就業環境の整備など
フリーランス新法第2章では「取引の適正化」について定められています。委託者は受託者に対して、業務の内容や報酬の額、支払期日その他の事項を書面等で明示しなければなりません。報酬については原則として成果物や役務を受領した日から60日以内に支払わなければなりません。委託者は、正当な理由なく受領を拒否したり、報酬を減額したり、返品したりなどの不当な行為をしてはなりません。
同法第3章では、「就業環境の整備」について定められています。委託者は、募集情報の的確な表示や育児・介護をしている受託者への配慮、ハラスメントが起きないような体制の整備等を行わなければなりません。
ほかにも、行政側の対応や違反した場合の罰則等について定められています。1年6か月以内に施行されます。フリーランスを活用している企業では、今のうちに同法の内容や前述のガイドラインを参照してください。両方とも、下記のサイトで確認することができます。
フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)