Management Column2024年7月3日、新札を発行!どのように変わったのでしょう?
2024年7月3日に、日本の一万円札、五千円札、千円札が20年ぶりに改刷されました。新札は、150年以上の歴史の中で培われた偽造防止技術を結集した最新のもので、偽造対策の強化だけでなく、視覚的にも識別しやすいデザインが施されています。
新札の「肖像」は3つの観点から選定
お札の肖像の選び方に法令上の制約はありませんが、主に3つの観点から選定されています。1つ目は偽造防止のため精密な写真が入手できること、2つ目は品格のある肖像であること、3つ目は国民に広く知られた人物であることです。
こうした観点から、現在のお札の肖像は明治以降の人物から選ばれており、人の顔や表情のわずかな違いに気づきやすい人間の目の特性を活かしています。
- ●新一万円札の肖像:渋沢 栄一(1840~1931)埼玉県深谷市出身
- 江戸時代末期に農民出身で武士となり、徳川家に仕えた。明治維新後は静岡に商法会所を設立。その後、明治政府に招かれ、造幣・戸籍・出納など政策立案に携わった。退官後は実業界で活躍し、500社以上の企業や団体を設立・経営。また、600以上の教育機関や公共事業、研究機関の設立・支援に尽力した。肖像画は60歳代前半の姿にリメイクされている。
- ●新五千円札の肖像:津田梅子(1864~1929)東京出身
- 6歳で日本初の女子留学生としてアメリカに渡り、11年間の留学後に帰国。華族女学校教授を経て、女性の地位向上のため再渡米。この際、英国の学術雑誌に論文が掲載され、日本人女性として初の快挙を成し遂げた。1892年帰国後、女子高等教育に尽力し、1900年に女子英学塾(現・津田塾大学)を創設。生涯を通じて女性の地位向上と女子高等教育振興に力を注ぎ、日本の女性教育発展に大きく貢献した。肖像画は、女子英学塾創設時の30歳代の姿をとらえたもの。
- ●新千円札の肖像:北里 柴三郎(1853~1931)熊本県小国町出身
- 細菌学の権威として知られる医学者。18歳で古城医学所兼病院(現・熊本大学医学部)に入学し医学の道を歩み始めた。その後、東京医学校(現・東京大学医学部)へ、卒業後は内務省衛生局に勤務、1885年にドイツ留学を命じられ、破傷風菌の培養や抗毒素の発見など画期的な業績を残した。帰国後は伝染病研究所を創立し、ペスト菌の発見にも貢献。その後も慶應義塾大学医学部創設や、日本医師会などの医学団体や病院の設立など医学の発展に尽力した。肖像画は50歳代で学者として確立した姿を描いている。
新札は偽造防止技術の結晶
新札には、偽造を困難にするための新しい様々な技術が採用されています。また、年齢、国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすいようなユニバーサルデザインが施されています。
- ●高精細すき入れで偽造がより困難に
- すき入れ(すかし)は、お札を光にかざすと浮かび上がる透かし入れの技術です。新札では、肖像の背景に小さな菱形の模様「高精細すき入れ」を入れているため、偽造をより困難なものにしています。
- ●お札に「3Dホログラム」が導入されたのは世界初
- ホログラムは、光の当たり具合で模様が変わる金属光沢の技術です。新札では一万円札、五千円札、千円札の3種類全てに、お札を傾けると肖像が左右に回転するデザインの「3Dホログラム」を採用しています。
- ●額面のアラビア数字を拡大
- 新札では、額面の数字が大きく拡大されています。表面では2倍から3倍、裏面では5倍ほど大きくなり、見やすさが向上しています。また、色使いの工夫により五千円札と千円札の識別性も高くなっています。千円札の中央部分に橙色を配置し、グラデーションをつけることで五千円札の紫色とは異なる見え方になっています。
- ●識別マーク
- 識別マークは、お札の種類を指で触って識別できるように設けられた凹凸のマークです。新札では、すべての銘柄で11本の斜線という同一の形状に統一されました。その上で配置を銘柄ごとに変え、識別のしやすさが向上しています。
旧札はもちろん使えます
お札には法律で定められた無制限の強制通用力があり、古くても21種類のお札は現在も使えます。
またお札を破損した場合でも、日本銀行の定める基準を満たせば交換してもらえます。全体の3分の2以上残っていれば全額、5分の2以上3分の2未満なら半額の交換が可能ですが、5分の2未満では交換できません。ただし、故意の汚損・損傷の場合は交換に応じられない可能性があります。
ちなみに日本銀行によると、寿命は一万円札で4~5年、五千円札・千円札で1~2年程度とされています。市中で流通したお札は、金融機関を経由して日本銀行に戻り、再流通に適さないものは裁断されます。裁断くずは住宅用の建材や固形燃料などにリサイクルされたり、焼却処分されています。
参考資料:政府広報オンライン
参考資料:新しい日本銀行券特設サイト(国立印刷局)