Management Column相続トラブルを少なくしよう~付言事項の活用
相続問題に携わる会計事務所も多いと思いますが、財産が多くても少なくても、相続は争続とよばれるほどトラブルが多いものです。会計事務所としては、相続税の節税方法や相続の法的手続きについては積極的にアドバイスできますが、トラブル相談には頭を悩ませている担当者も多いのではないでしょうか?
今回は、少しでも相続トラブルを少なくするためのポイントについて、まとめていきます。
生前対策をしてもらう
健康で長生きする予定であっても、事故等の不測の事態に備えて、早めの相続対策をすることは大切です。会計事務所が提案する節税対策でも、早めの段階から相談してもらうことで、相続時精算課税の利用等、提案できる対策の幅が広がります。納税資金対策もできるため、相続財産が多いのに納税に困るという事態を避けることも可能です。
生前対策では、節税対策のほかに、どのように遺産分割をするかについて、残された家族がもめないように考えておく必要があります。遺産分割対策で有効な手段となるのが、遺言書作成です。遺言書の記載内容には、法定遺言事項以外の内容を自由に記載できる「付言事項」というものがあります。
付言事項とは
付言事項とは、法定遺言事項以外の内容で、遺言書の最後に記載されるものです。「付言事項」という欄を作成し、ここに遺言書作成者の気持ちを自由に書き表すことができます。付言事項には法的拘束力はありませんが、これを記載しておくことによって、相続トラブルを避けることができるケースが多いのです。
付言事項には、例えば、遺言書作成者から相続人に対する感謝の気持ち、どのような思いで遺産分割を決めたか等を記載することが可能です。中には、相続をさせない理由等のマイナス感情を記載する方もいらっしゃいますが、感謝の気持ち等のプラス感情を記載したほうが、トラブル防止のためには望ましいですね。
付言事項で相続トラブル回避をする
自由に記載してよい付言事項については、文例が少ないため、どのように記載してよいか分からず、記載をしない方も多いのですが、付言事項は遺言書を読んだ人の気持ちをやわらげてくれる効果がありますので、ぜひ記載しておきたいものです。
よくある事例として、介護等で生前に面倒をみてくれた相続人に多くの財産を相続させたいケースがあります。この場合には、どのような苦労をさせてしまって、どれだけ感謝しているか等の具体的なエピソードを記載するとよいでしょう。また、ほかの家族に対する感謝の気持ちや、残された家族が皆で助けあって争うことなく幸せに生きていってほしいというような願いを併せて記載すると、遺産分割の内容に他の家族が納得してくれる可能性が高くなります。
相続の生前対策では、会計事務所としては節税対策や財産管理に意識が向きがちです。もちろん、大切な財産を守ることも大切です。しかし、節税対策を意識するあまり、遺言書作成者や相続人の意向を考慮しない提案をしてしまうと、トラブルのもとになってしまうこともあります。デリケートな相続問題では、まずは依頼者の気持ちによりそって話を聞く姿勢が、トラブル回避の第一歩といえるでしょう。