Management Column2024年4月からの相続登記義務化
会計事務所にとって夏は、繁忙期にはできない業務を片付けることができる季節ともいえるでしょう。忙しい時期にはできない調べものや、大掃除を夏に行うのもお勧めです。今年は猛暑が予想され、電力のひっ迫に備えて節電が呼びかけられています。エアコンの掃除とともに、会計事務所内の整理整頓を行うのもよいですね。
この時期にやっておくとよい業務に、クライアント情報の整理があげられます。2024年から相続登記が義務化されますので、相続に関与したクライアントがある場合には、相続登記の有無について確認するのもよいのではないでしょうか。
今までの相続登記
相続登記とは、被相続人名義の不動産登記を、相続人の名義に変更することをいいます。今までは、相続登記は早めにしたほうがよいものの、期限があるわけではなかったので、必ずしなければならないものではありませんでした。相続登記には費用がかかることもあり、名義が亡くなった人のままであるケースもありました。
とはいっても、相続登記を長期間しないことで、処分したくても不動産を売却できなかったり、相続人間のトラブルになってしまったりすることもあります。特に近年では、相続人の高齢化により認知症などで遺産分割が困難になってしまうケースも見受けられますので、早めの相続登記がよいとされていました。
相続登記が義務化された背景
今までは義務ではなかった相続登記ですが、2024年4月1日から義務化されます。その理由は、相続登記がされていないままの不動産が増えたことで、所有者不明土地が増加し、公共事業や災害復興の妨げになったり、ゴミの不法投棄問題が発生したりと社会的な問題となったからです。
土地や建物の不動産は登記によって管理され、固定資産税が課税されます。また、不動産の管理も原則として、登記簿に所有者として登記された者が行います。しかし、登記された者が亡くなっていると固定資産税や管理費を負担すべき者が曖昧になってしまいます。
所有者不明土地をなくすために、相続登記義務化のほかにもさまざまな関連法があります。
法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)相続登記義務化の内容
相続登記は、2024年4月1日から義務化されますが、相続登記の期限は、相続人が相続する財産に土地や建物があることを知ったときから3年以内とされています。通常は、被相続人が亡くなった日から3年以内となります。過去に相続した不動産についても、遡って相続登記の義務化の対象になります。これに違反した場合には罰則があり、100,000円以下の過料に処されます。ただし、相続人が多数で相続人の確定に時間がかかる場合や相続人の健康状態が良くないなどの事情は、正当な理由がある場合として考慮されます。また、遺産分割協議がまとまらないため3年以内の相続登記ができない場合に備え、相続人申告登記が創設されます。
相続登記の際の登録免許税は、令和7年3月31日までの免税期間がありますので、まだ相続登記を終えていない場合は免税期間内に終わらせるとよいでしょう。
国税庁 相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について