Management Column相続税と贈与税が一体化された場合の相続対策は?
さまざまな問題でニュースなどで取り上げられることの多い岸田政権ですが、内閣支持率が低いと国会への影響が気になります。税法の改正も、国会で改正案が通るかどうかが関係するために、支持率や税法改正動向には注意しておきたいですね。
今後の改正動向が注目されている税金のトピックスの1つに、相続税と贈与税の一体化があげられます。相続対策に大きくかかわるため、どのような方法で相続税と贈与税を一体化しようとしているのかが注目されています。相続税と贈与税の一体化が進むと、相続対策として生前贈与を活用するという節税対策ができなくなる可能性もあります。 今回は、相続税と贈与税の一体化が実現した場合の相続対策はどうしたらよいのかなど、関連項目について考えてみます。
現在の相続対策としての生前贈与
相続対策としての生前贈与は、生前贈与により将来の相続税を減らすことで行われています。贈与を行うと贈与税がかかり、相続税率より贈与税率のほうが高くなります。しかし贈与税では、贈与を受ける人1人あたり年間110万円の基礎控除があるため、この基礎控除を適用しながら長期にわたって贈与を行う対策を行うことで、贈与税がかからない範囲で贈与を行うことが可能となっています。
そのほか、扶養義務者からの生活費や教育費で通常必要と認められるもの、香典など社会通念上相当と認められるものの贈与も、贈与税の対象とはなりません。また、贈与税は個人間にかかる税金であるため、法人から贈与を受けた場合には贈与税ではなく所得税の対象となります。さらに、財産の状況や金額によって相続時精算課税制度を活用する方法などもあります。
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合相続税と贈与税の一体化とは?
現在、相続開始前3年以内の贈与については、相続税を計算する際に加算する制度がとられており、生前贈与加算とよばれています。これは、いわゆる駆け込みの相続対策を回避するための制度です。相続税と贈与税の一体化は、この3年の期間を延ばす方法が考えられており、10年、15年と期間を区切る方法のほか、その期間を一生涯とする方法も考えられています。日本では3年となっていますが、他の先進諸国ではもっと長い期間で計算する制度がとられており、特にアメリカでは一生涯とされています。
また、日本でも相続時精算課税制度を適用すると、制度選択時から2,500万円まで非課税となるかわりに、相続発生時に適用を受けた贈与金額を相続税の計算に加算することとなっています。この制度も、相続税と贈与税が一体化制度であると考えることができます。相続税と贈与税を一体化する方法として、すべてを相続時精算課税制度にするという方法も考えられています。
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択相続税と贈与税の一体化された場合の節税対策は?
相続時精算課税制度では、将来値上がりする財産は贈与時の価格で課税されるため、時価が下がっている間に贈与するとメリットがあります。たとえば株式や事業承継時の自社株について、時価が値下がりしているタイミングで贈与するという方法が考えられます。また、賃貸収入がある不動産を早めに贈与すると、贈与した後の不動産からの収入が相続財産に加算されないためメリットがあります。相続税と贈与税が一体化された場合には、相続時精算課税制度と同じように、将来値上がりする可能性のある財産を時価の低いうちに贈与する、収益不動産を早めに贈与するという節税対策が考えられます。
贈与税の非課税枠の範囲内で少しずつ資産を移転するという方法は、相続税と贈与税の一体化が実現されると難しそうです。しかし、相続税と贈与税が一体化することで、ある程度、財産移転時期を自由に選択することができ、贈与か相続かによって税金が変化しないことにより生前に財産を移転しやすいというメリットがあります。