Management Columnパワハラ防止措置 義務化されて2年
ハラスメント防止と法律
「ハラスメントは良くないよね」という意識は、今の日本社会におおむね根付いているように思います。振り返ってみれば、従業員を雇用する企業にハラスメント防止措置を義務づける法律は以下のように拡充されてきました。
- 1999年4月 男女雇用均等法で女性労働者に対するセクハラ防止のための配慮義務
- 2007年4月 「男女労働者に対するセクハラ防止の措置義務」に改正される
- 2017年1月 「マタニティハラスメント(マタハラ)防止の措置義務」が追加される
- 2020年6月 労働施策総合推進法で大企業にパワハラ防止のための措置義務
- 2022年4月 中小企業にパワハラ防止のための措置義務
ドラマ「不適切にもほどがある!」にも
つい最近話題になったTVドラマ「不適切にもほどがある!」には、ハラスメント問題も登場していました。このドラマの起点である1980年代には、そもそも「パワハラ」という概念はありませんでした。そんな時代から現代にタイムスリップした主人公たちの引き起こすドタバタ社会派コメディーに多くの人が引き付けられました。「ハラスメント=良くないこと」という大まかな合意がベースにありつつも、ハラスメントをめぐる問題を具体的にどうとらえるべきか、人々の意識レベルではまだすっきりとはしていないことを、このドラマは描き出したように思います。 さて、前述のように、個人・法人を問わず従業員を雇用するすべての企業に、具体的なパワハラ防止措置が義務付けられて、この4月で2年が経過しました。あらためて、職場のハラスメント防止措置が掛け声だけでなく実効性のあるものになっているかどうか、点検する必要があります。
ハラスメントは人権侵害
2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「過去3年間でパワーハラスメントを受けたことがある」と回答した人は、実に全体の31.4%に上りました。これは、「ハラスメントが起きない企業はない」と考えるべき数字であるような気がします。 ハラスメントは人権侵害であり、本来許されることではありません。被害者は、精神的、肉体的に理不尽な苦痛を被ることで、心身に不調をきたすことさえあります。さらには、ハラスメントを見聞きした周囲の人々にも悪影響を与えます。労働意欲やモラルが低下するなど、職場環境を悪化させます。パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」(2022年)によれば、2021年には全国で86.5万人がハラスメントを理由として離職しています。人手不足のおり、「ハラスメントが原因で離職」というのは、企業にとっても大きな損失です。
ハラスメント防止措置
事業主に義務付けられているハラスメント防止措置は、以下のとおりです。
- 1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 3.職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 4.併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、その原因や背景となる要因を 解消するための措置も含まれる
事業主は、これらの措置を必ず講じなければなりません。リンク先を参照して、その詳細をご確認ください。 これらの措置は、決めて周知してそれで終わりというものではありません。「ハラスメント防止宣言」を出しても、実際にハラスメントが見過ごされていれば、その宣言は効力を発揮していません。相談窓口を作っても、その人選に問題があったり必要な教育が行われていなかったりすれば、窓口としてふさわしい役割を担うことはできません。これらの防止措置に実効性を持たせるには、点検・啓発・教育などを継続しておこなう必要があります。
厚生労働省 パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」p.19-30