Management Column新型コロナによる経営不振と人員整理
世界で新型コロナの感染症拡大による外出禁止、渡航制限等、さまざまな話題がニュースで取りあげらています。日本では今のところ、爆発的な感染者の急増は確認されておらず、感染が広がっていない地域での学校再開等のニュースもみられるようになってきました。しかし、依然として観光業界や外食産業をはじめとした経済への影響は大きく、経営継続が困難な会社も多くでてきています。
新型コロナの影響を大きく受ける企業が生き延びる道として、最初に頭に浮かぶのが人員整理です。人員整理の対象となり職を失う人も増えてきています。今回は、企業側からみた人員整理について考えていきたいと思います。
解雇の基礎知識
解雇とは、使用者から労働者に対する労働契約の一方的解約のことです。今回の新型コロナ感染症拡大を受けて人員整理を行い、経営者から使用者を一方的に退職させるのは「解雇」にあたります。
使用者が雇用期間を定めていなかった場合は、使用者はいつでも解雇を申し入れすることができます。解雇をするには、解雇を行う30日前に解雇予告を行わなければならず、解雇予告をしないで即時解雇するには、30日以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
ただし、所轄の労働基準監督署長から「解雇予告除外認定」を受ければ、即時解雇が可能になります。この認定を受けることができるのは、労働者に責任がある場合・天災事変・その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合です。解雇予告除外認定の効力は、即時解雇の意思表示をした日に遡り発生するため、労働基準監督署の決定を待たずに即時解雇を行うことも可能です。ここで問題となるのが「やむを得ない事由」ですが、経営悪化だけではこれに当たらない可能性があるので注意が必要です。
厚生労働省 労働契約の終了に関するルール解雇方法の1つである整理解雇
たとえば「従来の取引事業場が休業状態で発注品がなく、そのために事業が金融難に陥った場合」には、解雇予告除外認定の事由として認められません。新型コロナ感染症の影響はまだ最近の出来事であるため、認定を受けることができるかどうかはわかりませんが、安易な解雇はトラブルのもとになります。
経営悪化による人員整理のために行う解雇の方法として考えられるのは「整理解雇」という方法です。解雇は従業員の生活にかかわるため、経営が悪化しても解雇は最終手段であると考えられており、人員削減の必要性・解雇回避の努力・人選の合理性・解雇手続きの妥当性の4つの基準を満たす必要があります。つまり、希望退職者の募集や解雇対象者との話し合いを行う等を行い、はじめて整理解雇が可能となるのです。
新型コロナによる経営不振で解雇をすべきか否か
新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会全体に大きな影を落としおり、東京オリンピックの開催も疑問視する声があがっています。そのような状況の中、安倍総理大臣は、東京オリンピックの完全な形での開催を目指す考えを示しました。新型コロナが収束した後のことを考えると、人手不足の状態に戻るかもしれません。そのときに、安易な人員整理に踏み切った企業は信用力を落とし、人手が集まらなくなることも考えられます。
とはいっても、企業自体が生き延びることができるかどうかわからない今、人員整理をせざるを得ない場合もあります。まずは、助成金・融資制度の利用等、できるだけ解雇しないで生き延びる方法を考え、どうしても解雇という方法を選択せざるを得ない場合には、トラブルを少なくするための話し合いをしっかり行うべきです。生活資金に悩む個人のための貸付制度も準備されていますので、企業と個人が一体となり、危機を乗り越えていくことを考えていくことが大切です。