Management Columnコロナ禍で役員報酬減額・・・注意点は?
新型コロナウイルスだけでなく、熱中症にも注意が必要な日々が続いています。日本のGDPがマイナス27.8%で過去最大というニュースもメディアを賑わせました。様々なニュースの中で、関西電力で減額した役員報酬の補填が問題となっているというものがありました。
役員報酬の減額を、コロナ禍で実施している会社も多いと思います。役員報酬の減額の補填については法令違反の可能性がありますが、減額を行うこと自体は、法律の範囲内で行うことが可能です。この役員報酬の減額を行うときには、いくつかの注意点があります。
役員報酬の決定とその変更
役員報酬は、事業年度開始から3か月以内の株主総会を経て決定するのが一般的です。決定された役員報酬は、事業年度の途中では原則として変えることができません。役員報酬の金額を自由に変えることができると、節税のための利益操作等が容易になってしまうからです。
事業年度が開始してから4か月以上を経過した時期に、新しく役員となる場合、役職ランクがあがる場合等の理由なしに役員報酬を増額すると、税法上はその増額分の損金算入が認められません。損金にはできませんが個人所得にはなりますので、法人税と所得税の両方がかかってしまうことになります。
反対に、役員報酬の減額の場合は、業績が悪化していると認められる場合、役員でなくなった場合、役職ランクが下がった場合等で可能です。国税庁の「新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」では、新型コロナ感染拡大の影響による経営悪化について、「役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避」の場合には、法人税法の業績悪化改定事由にあたるとしています。
国税庁 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係 国税庁 役員給与に関するQ&A役員給与の減額が財務に及ぼす影響と注意点
新型コロナ感染拡大の影響により経営が悪化した場合、役員報酬の減額は経営改善のための一つの検討事項といえます。役員報酬を減額することで、会社の経費が少なくなり、社会保険料の会社負担分もすくなくなります。
ただし、標準報酬月額に応じて給与から天引きされている社会保険料は、標準報酬月額が2等級以上落ちてから3か月経過後にしか変更されないため、役員報酬に対して大きい割合の社会保険料を負担することになってしまいます。住民税も、変更される時期が6月であるため、役員報酬に対して高い割合の住民税が控除されることになります。所得税の予定納税を行っている場合、予定納税額は前年の所得を基準に計算されますが、予定納税額の減額申請手続により減額が可能です。
役員報酬を0円にすることは可能?
経営状態が悪化し、役員報酬を低く抑えることが求めらる場合、いくらまで低くすることができるのでしょうか?0円にすることも可能なのでしょうか?
実際に、役員が役員報酬を会社からもらっていないケースも多く、制度的にも0円とすることに問題はありません。「プライベートな費用を会社から支払えば、役員報酬を0円にすることをができるのでは?」と考える経営者もいるかもしれません。しかし、プライベートな費用は会社の経費とは認められず、役員報酬0円だと、生活費をどこから支払っているのかが問題となり、税務調査で追及されやすくなります。また、法人の株価が高くなったり、将来の退職金支給額決定の際に問題が生じたりする可能性もあります。
新型コロナ感染拡大の影響で経営が悪化し、やむを得ず実際に貯金を取り崩して生活しているというケースの場合には役員報酬0円でもよいかもしれませんが、そうでなければ、適正な役員報酬の金額を決定するほうが無難な選択といえるでしょう。