Management Column参議院選挙の結果が税金に及ぼす影響
先日、参議院選挙が行われ、自民党が単独で過半数の議席を確保し、大勝しました。参議院選挙は、3年に1回行われます。安定した基盤を確保した自民党は、解散・総選挙がなければ、次の参議院選挙までの3年間、選挙の心配をすることなく国政に取り組むことができます。ニュースなどでは、「黄金の3年間」と報道されています。
税理士・会計事務所は、税金にかかわる職業であるため、政治に大きな影響を受ける業種です。自民党政権の圧勝は、どのような影響があるのでしょうか。
消費税は?
消費税は、近年、10%に引き上げられ、さらにインボイス制度導入が間近であることなど、大きな改正が続いています。消費税について、参議院選挙では、与党では現状維持、野党では概ね減税という路線で公約が掲げられていました。自民党が圧勝することにより、消費税は現状維持路線が続くと予想されます。
消費税は、律に負担を強いられる税金であるため、できれば減税してほしいというのが国民の本音だと思います。しかし、消費税は社会保障制度の大きな財源となっており、消費税を減税すると、少子高齢化社会で負担の多い年金支給額を維持できなくなってしまう可能性が高くなります。現状維持でも仕方がないという判断といったところでしょうか。
物価上昇対策としての賃上げ促進税制
自民党は、これまでも賃上げ促進税制に取り組んでおり、物価上昇対策として今後もその方向性が継続されていくと予想されます。
中小企業向けの賃上げ税制は、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額を法人税または所得税から税額控除できる制度です。賃金上昇により人件費が増加する中小企業にとっては、税金の負担が減ることにつながります。経営が順調な企業で人件費を拡大することができる企業であれば、その適用を受けることができるかもしれません。しかし、経営難を乗り越えるためにコスト削減に取り組む企業にとっては、賃上げ促進税制があるからといって、積極的な人件費拡大に取り組むことは難しいかもしれません。
中小企業の立場から考えると、賃上げを実施しやすいよう、賃上げ促進税制以外にも、経済回復にむけた政策が望まれるところです。
中小企業庁 中小企業向け「賃上げ促進税制」今後の注目すべき課題
選挙戦が落ち着つくと、気になるのが現在、問題となっている国内外の動きへの政府への対応です。
円安は中小企業の経営に大きな影響を与えていますが、その原因の1つに現在の大規模な金融緩和政策があげられています。現政権では、この金融緩和政策を維持する方向性のようですが、諸外国ではを引き締める方向性です。金融緩和と金融引き締めには、それぞれメリットとデメリットがありますが、今後、どのような方針をとっていくのかが注目されます。
また、今回の参議院選挙の大きな争点として、防衛費の拡大や憲法九条がありました。これらを考えるにあたって根拠となる理念は、もちろん大切ですが、税金にかかわる業種として気にかかるのは、その財源です。今のところ、具体的な財源が不明だといえます。中小企業では、多くの企業が収入増加と費用削減に頭を悩ませており、小さな努力を積み重ねています。国政においても、増税による税収入増加のほか、不必要な費用を削減することにも力を注いでほしいところです。