Management Column「健康経営優良法人2025」発表、認定企業のメリットとは!

経済産業省では、2014年度から上場企業を対象に 「健康経営銘柄」 を選定、また、2016 年度からは「健康経営」を推進する「健康経営優良法人認定制度」を実施しています。この制度は、地域の健康課題や日本健康会議の取り組みに基づき、優れた健康経営を実践する法人を「見える化」し、社会的な評価を得やすくする仕組みです。
今年3月には「健康経営優良法人2025」として、大規模法人部門で3,400法人、中小規模法人部門で19,796法人が認定されました。健康経営は健康長寿社会の実現に向けた重要な取り組みとして評価されています。
1.健康経営とは何か
健康経営とは、従業員の健康管理を経営戦略の一環として捉え、健康の保持・増進に向けた取り組みを推進する活動のことです。経済産業省は、この健康経営を健康長寿社会の実現に向けた重要な施策と位置づけています。企業が健康経営に積極的に取り組むことで、従業員の生産性向上や医療費の削減が期待され、最終的には企業価値の向上につながります。
また、健康経営は企業だけでなく、地域社会全体の活性化や国民の健康寿命の延伸にも寄与する取り組みとして注目されています。さらに、健康経営を実践する法人には認定制度や補助金制度を通じた支援が行われており、取り組みの普及と質の向上が図られています。健康への投資は組織の活性化や業績向上をもたらす有益な戦略であり、企業の長期的な成長に寄与すると考えられています。
■「健康経営・健康投資」とは

2.健康経営優良法人認定制度とは
健康経営優良法人認定制度は、特に優れた健康経営を実践している法人を認定する仕組みで、企業の取り組みを「見える化」することで、従業員や求職者、取引先、金融機関などからの評価を得やすくすることを目的としています。
認定は、日本健康会議が策定した評価基準に基づき実施されます。また、認定法人には「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」があり、それぞれ上位法人には「ホワイト500」「ブライト500」などの称号が付加されます。
■健康経営に係る顕彰制度について(全体像)

■健康経営度調査の評価項目
①経営理念 | ・経営トップのコミットメント、統合報告書への記載等を通じた社内外への発信 |
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②組織体制 | ・社長や役員が健康づくり責任者になる等、経営層が参加する組織体制の構築 ・専門職の関与、健康保険組合との連携体制の構築 |
③制度・施策実行 | ・計画の策定
例:従業員の健康課題を把握、健康課題解決のために有効な取り組みを設定、健康経営で実現する目標値と目標年限を明確化
・土台作り
例:ヘルスリテラシー向上のための研修を実施、ワークライフバランスや病気と仕事の両立に必要な就業規則等の社内ルールの整備
・施策の実施
例:食生活の改善、運動機会の増進、感染症予防、メンタルヘルス不調者への対応、受動喫煙対策、女性の健康課題への対応
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④評価・改善 | ・実施した取組の効果検証、検証結果を踏まえた施策の改善 |
法令遵守・リスクマネジメント | ・定期検診やストレスチェックの実施、労働基準法、労働安全衛生法の遵守 |
3.日本健康会議が目指す社会
日本健康会議は、国民一人ひとりの健康寿命の延伸や医療費の適正化を目指し、民間と行政が連携して取り組む活動体です。同会議は、職場や地域を主体とした健康づくりを推進し、高齢者が活き活きと活躍し、若者と支え合いながら生活できる社会の実現を目標としています。
「日本健康会議2025」では、2025年を目標年度とし、「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」を掲げています。これには、地域づくりやデジタル技術の活用、企業の健康経営への参画促進などが含まれており、これらの取り組みを通じて、感染症や生活習慣病に強い社会基盤を構築することを目指しています。
■健康づくりに取り組む5つの実行宣言
宣言1 | 地域づくり・まちづくりを通じて、生活していく中で健康でいられる環境整備に取り組む自治体を1,500市町村以上とする。 |
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宣言2 | 47都道府県全てにおいて、保険者協議会を通じて、加入者及び医療者と一緒に予防・健康づくりの活動に取り組む。 |
宣言3 | 保険者とともに健康経営に取り組む企業等を15万社※以上とする。 ※2022年、2023年の過年度分の調査において中小規模法人数に集計上の誤りがあることが判明、訂正数値をもとにこれまでの伸び率等を勘案し、達成目標を2024年より修正
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宣言4 | 加入者や企業への予防・健康づくりや健康保険の大切さについて学ぶ場の提供、及び上手な医療のかかり方を広める活動に取り組む、保険者を2,000保険者以上とする。 |
宣言5 | 感染症の不安と共存する社会において、デジタル技術を活用した生涯を通じた新しい予防・健康づくりに取り組む保険者を2,500保険者以上、医療機関・薬局を20万施設以上とする。(2023年10月から達成要件等を見直し) |
4.健康経営と補助金活用のメリット
健康経営に取り組むことで、企業は認定制度を通じた社会的評価を得るだけでなく、国や地方自治体からの具体的な支援を受けられるメリットがあります。例えば、健康経営優良法人に認定されることで、補助金申請時の加点や融資時の優遇利率が適用されます。
また、新たな設備投資やITツールの導入、事業継承などの場面で、財政的支援を受けやすくなり、代表的な補助金には以下の「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などがあります。健康経営は、企業と社会の双方に利益をもたらす重要な取り組みと位置付けられています。
補助対象 | 補助内容 | |
ものづくり・商業・ サービス生産性向上 促進補助金 |
革新的製品・サービスの開発又は生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援する | 補助率1/2もしくは2/3、補助上限額2,250万円* *従業員数・申請枠・類型により異なる |
IT導入補助金 | 生産性向上に資するITツール(ソフトウェア・サービス等)の導入を支援する | 補助率1/2、補助上限額450万円 |
事業継承・ 引継ぎ補助金 |
事業継承を契機とした経営革新的な取組や、専門家を活用した事業の引継ぎを支援する | 補助率1/2もしくは2/3、補助上限額600万円* *経営革新事業は一定の賃上げ要件を満たすと最大800万円 |
Go-tech補助金 | 中小企業等がものづくり基盤技術及びサービスの高度化に向けて、大学・公設試と連携して行う研究開発を最大3年間支援する | 中小企業等は補助率2/3以内、通常枠:最大9,750万円、出資獲得枠:3年間合計3億円以下 |
事業再構築補助金 | 新市場進出、事業・業種転換、国内回帰等、事業再構築を行う事業者を支援する | 中小企業は補助率1/2~3/4、補助上限額500万円~5億円 ※従業員数・申請枠により異なる |