Management Column世界と日本の年末調整と今後の動向
年末調整の進行具合は、いかがでしょうか?ひとまず、12月の給料を入力すればよいだけのところまで、作業を進めることが目標です。働いている人にとっては、会社で年末調整をしてくれるので、所得税や住民税の確定申告をしなくてよいため、便利な制度といえますが、会計事務所にとっては大変な時期です。体調に気をつけながら、効率的に作業を進めていきましょう。
今回は、世界の年末調整の豆知識と、日本の年末調整の今後の動向についてお伝えします。
源泉徴収や年末調整の歴史
年末調整は、日本だけの制度と思われている方も多いと思いますが、実は、年末調整は世界でも普及している制度なのです。年末調整は、給料から税金を源泉徴収で天引きし、天引きした税金と1年間の税金の差額を調整する制度であることは、ご存じの通りです。
歴史的にみると、源泉徴収の制度のはじまりは、イギリスでのナポレオン戦争時に、貴族階級を対象として、戦費調達のために所得税を徴収したことなのだそうです。国民に広く源泉徴収制度を採用したのは、ナチスドイツで、当時から扶養控除制度や住宅促進税制制度が考案されていたそうです。科学の発達は、戦争の歴史と重なる部分がありますが、国費の調達をするための税金制度の発達も似ているところがあるのかもしれませんね。
世界の年末調整
年末調整を行っている国で、有名な国はドイツです。日本と同じように、給与所得者の所得税に相当する税金に対して、10人以上を雇用している雇用主に年末調整義務が課されているそうです。また、ノルウェー・ポルトガル・韓国にも年末調整制度があるようです。イギリスにも源泉徴収制度はありますが、年末ではなく、その都度調整する方式を採用しているようです。アメリカ・フランス・イタリア等の国では、源泉徴収制度はあっても年末調整という制度はありません。
年末調整は大変ですが、日本だけでなく世界でも年末調整の作業をしている国があると思うと、興味深いですね。
日本の年末調整と今後の動向
日本では、まず所得税が1887年(明治20年)に、軍事費増大に対応するために導入されました。その後、1940年(昭和15年)に、戦費調達のために所得税の課税対象者を増やし、効率的に所得税を徴収するために、源泉徴収制度が採用されました。戦後の税制改革で申告納税制度が採用され、国民全員が確定申告をする負担を軽減するために、年末調整制度が採用されたそうです。
そして現代では、一層の税務手続きの効率化のために、年末調整手続きの電子化が議論されています。従業員の控除証明書等の電子データでの受け取りやマイナポータルとの連携等、国税庁を中心に準備が進められています。会計事務所としても対応が必要になってくると思われます。
具体的な取り組みについて、国税庁でアナウンスがありますので、チェックしておくとよいでしょう。
国税庁 年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)