Management Column経理担当者が知っておくべき民法改正のポイント
新型コロナの感染拡大は、5月末に入り、一時的な収束の気配を見せています。これは、日本国民の日頃の自粛努力の賜物といえるのではないでしょうか?会計事務所としては、政府の支援策や金融機関の情報を提供しつつ、従来の業務もこなしていかなければなりません。
また、政府の対応に注目が集まり、Twitterでの反応によって、検察庁改正法案が見送られました。コロナ騒動がきっかけとなり、政府の動きに多くの人が注目するようになったのはよい変化といえるのではないでしょうか?
今回は2020年4月から施行されている改正民法について、解説します。
2020年4月施行の改正民法
明治時代に作られた民法が120年ぶりに全面的に見直され、2020年4月に改正民法が施行されました。緊急事態宣言が解除された後は、経済を動かしていかなければなりませんが、経済を動かすルールの中で最も大切なものが法律です。この中でも、民法は私法の一般法です。つまり、個人や会社同士のルールを定めた原則的な法律ということです。
今回の改正の主なものは、民法全体共通の「総則」と、取引に関する「債権」です。企業実務に大きく関係するものとして「瑕疵担保責任に関する見直し」「短期消滅時効の廃止」「定型約款に関する規定の新設」「保証に関する見直し」「法定利率の見直し」が挙げられます。この中で、今回は、瑕疵担保責任と短期消滅時効についてみていきます。
瑕疵担保責任から契約不適合責任へ
改正前の民法570条では、「瑕疵」という表現を用いており、売買をするときに、目的物に欠陥(瑕疵)があった場合のルールを定めていました。改正前は、瑕疵とは何かが定義されておらず、通常有すべき性質や性能を備えていないことが瑕疵であるという解釈が一般的となっていました。
改正民法では、「瑕疵」という文言ではなく、「契約の内容に適合しないもの」(契約不適合)という表現が用いられ、損害賠償請求・契約の解除のほかに、履行の追完請求・代金減額請求が可能となりました。改正により、売買契約の内容に適合しない場合の責任追及手段が多様化されたことになります。
短期消滅時効が廃止・時効期間5年に
改正前の民法では、債権の消滅時効は原則的に10年で、業種ごとに飲食店は1年、工事請負代金は3年、商行為の債権は5年、等の規定となっていました。
改正民法では業種ごとの短期消滅時効が廃止され、権利行使できるときから10年、権利行使できることを知ったときから5年のいずれか早いほうという規定に統一されました。つまり、原則5年、最長で10年となります。
一連のコロナ騒動で、売掛金回収トラブル等が予想されますので、時効には注意しておきましょう。