Management Column持続化給付金をめぐる諸問題
国会では、持続化給付金の委託業務をめぐって、議論が紛糾しています。正しい納税を指導する立場にある会計事務所としては、税金の使い道には透明性を確保してほしいものです。納税義務は憲法で定められています。国民は法律に従い税金を納めています。税金を使う側にもしっかりと法律に従ってもらうことで、はじめて「正しく税金を納めてください」と指導できるのではないでしょうか?
今回の問題がクローズアップされたことにより、国民が税金の使途に興味を持つようになったことは、良いことともいえます。税金がどのように使われているかについて、今後も、国民はしっかり監視していくべきでしょう。
今回は、持続化給付金をめぐる諸問題について考えてみます。
持続化給付金の委託業務問題とは?
そもそも持続化給付金の委託業務は何が問題となっているのでしょうか?経産省は、給付金の審査や送金手続きを、一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で委託しました。同協議会は、749億円で業務の大部分を電通に再委託しました。同協議会がトンネル会社ではないか、ということで取り上げられています。
心情的には、国民ばかりでなく、コロナ患者を受け入れた病院までもが、赤字で頑張っているのに、トンネル会社を作ってまで利益を吸いあげようとしているのではないか、といったところです。法律的には、現段階では説明不足が問題となっているようです。
再委託は法律違反ではないのか?
再委託は、一般事業ではよく行われていることで、契約書での取り決めがあれば可能です。再委託は、業務をスムーズに行うメリットがある反面、情報漏洩リスクが高まるため、依頼元に心よく思われないケースもあるようです。
では、公共事業ではどうなのでしょうか?まず、公共事業では、競争性や透明性を確保するために、随意契約や競争入札において、情報公開の充実が求められています。今回は競争入札であり、委託契約の全部を一括して第三者に委託することを禁止しなければならないことになっていますが、合理的な理由があれば再委託も可能ということです。ということは、電通との間に同協議会を通さなければならない事情があったのであれば、その事情をしっかりと説明する必要があるのではないでしょうか?
税務省 公共調達の適正化について競争入札の問題点
持続化給付金の委託業務は、競争入札によって、一般社団法人サービスデザイン推進協議会が落札しました。総合評価落札方式によっており、価格と価格以外の要素を総合的に評価して判断されます。この入札には、会計業界では有名なデロイトトーマツのグループ会社であるコンサルティング会社も参加したのですが、ランクはデロイトトーマツが等級Aで、同協議会が等級Cでした。なぜサービスデザイン推進協議会のほうが選ばれたのかが、疑惑の焦点になっています。提出された資料では、黒塗りの部分が多く、全体像が把握できないようになっており、この点も明確な説明が求められています。
税金を納税する側は、税務調査があると、全ての資料の提出を求められ、厳しくチェックされます。税金を使う側には、これよりもっと厳格な調査をしなければ、国民は納得しないのではないでしょうか?
持続化給付金は課税されるか?
委託業務先の問題の他、対応の悪さや給付の遅れが大問題となっている持続化給付金ですが、新型コロナの影響で厳しい経営環境下にある事業者の事業継続を支援するため、使途に制約がありません。税金上は、益金または総収入額に算入されます。つまり、持続化給付金は課税対象となります。
しかし、持続化給付金を支給される事業者は、厳しい経営環境下にあり、利益が発生しないことが多く、結果的に課税所得が生じず、税金も発生しない可能性が高いといえます。ただし、決算までに経営状態が良くなり、一事業期間を通算して利益が発生すれば、税金もかかるので注意が必要です。