Management Column寡婦控除・ひとり親控除の具体的適用~事実婚とは?
前回は、年末調整の改正点についてまとめました。この中でも、新設された「ひとり親控除」ですが、具体的にはどのようなケースを指すのでしょうか?また、従来からの「寡婦・寡夫控除」とは、どのように違うのでしょうか?
クライアントには多くの従業員が在籍していますが、そのほとんどは、年末調整について改正があったことは知りません。配偶者がいなくて子どもがいる方や、今まで寡婦・寡夫控除を受けていた人について、控除制度の適用の可否をチェックする必要があります。そこで、寡婦・寡夫控除とひとり親控除について、具体的な適用要件をまとめてみました。
改正後の寡婦控除
改正後の寡婦控除は、「ひとり親」に該当せず、次のいずれかのケースに当てはまる人です。ただし、いずれの場合も、事実婚と認められる一定の人がいる場合には対象外です。控除額は27万円です。
- <寡婦控除・ケース1>
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- 夫と離婚した後、婚姻をしていない
- 扶養親族がいる
- 合計所得金額が500万円以下
- <寡婦控除・ケース2>
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- 夫と死別した後、婚姻をしていないか、夫の生死が明らかでなく一定の要件を満たす。
- 合計所得金額が500万円以下
なお、改正前は、寡夫制度と特別の寡婦制度がありましたが、今回の改正で廃止されています。したがって、これらに今まであてはまっていた人は、事実婚の人がいると控除を受けることができなくなり、事実婚の人がいなければ「ひとり親控除」の適用判定がされることになります。2つの制度は「ひとり親控除」に統合され、わかりやすくなったといえるでしょう。
ひとり親控除
新設された「ひとり親控除」は、次の要件を満たす人に適用されます。控除額は35万円です。
- 婚姻をしていないか、配偶者の生死が明らかでなく一定の要件を満たす。
- 事実婚と同様の事情にある人がいない。
- 総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない生計を一にする子がいる。
- 合計所得金額が500万円以下
事実婚とはどのような状態?
今回の改正では、いずれのケースでも事実婚にあたる場合は、適用ができなくなっています。事実婚というと、婚姻をしないで同棲しているケースなのかな?と頭に浮かびます。最近では、夫婦別姓を選択する人も増えてきています。では、具体的にどのようなケースをいうのでしょうか?
国税庁のWebサイトによると、住民票に未届の夫又は未届の妻である等、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄であることの記載がある場合をいうとのことです。一方、控除対象配偶者は、民法の規定による配偶者であることが必要であり、内縁関係の人は該当しません。住民票に事実婚である記載を行うと、ひとり親控除も配偶者控除も適用できないといえますね。なお、社会保険の扶養は、住民票に事実婚の記載があることで、判定が可能とされています。