Management Column国税庁の年調ソフトの利用方法は?
会計事務所では、年末調整の準備が進められていると思います。今回の年末調整は、変更点が多く、確認作業が大変ですね。
国税庁では、以前から予定していた通り、年末調整控除申告書作成ソフトウェア(年調ソフト)の無償ダウンロードを開始しました。会計事務所では、市販の年調ソフトを使って作業を進めるところがほとんどです。この国税庁のソフトは、会計事務所の作業にどのように影響するのでしょうか?
今回は、国税庁の年調ソフトについてまとめました。
国税庁の年調ソフトとは?
国税庁では、年末調整手続の電子化を促進するために、10月1日から年調ソフトの無償ダウンロードをはじめています。パソコン版だけでなく、スマートフォン版も公開されています。これにあわせて、マイナポータルとの連携、10月28日からはチャットボットによる年末調整の相談も開始されているようです。
今までは、従業員が紙ベースで保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書等を提出していました。これからは、国税庁の年調ソフトを利用して、会社に電子データで提出できます。マイナポータルと連携することで、生命保険料控除や地震保険料控除等のデータを自動で取り込むことができ、控除証明書が不要となります。従業員と会社双方の、事務処理手続き軽減を目指すものとなっています。
年調ソフトの利用方法
会計事務所では、今までは、会社に提出された控除証明書等をまとめ、市販の年調ソフトに入力することで、年末調整を進めてきました。国税庁の年調ソフトは、年調計算や源泉税の精算を行ってくれるものではないため、電子データで受け取った年調資料を、会計事務所で使用している年調ソフトに取り込むことで、年末調整を進めていくことになります。国税庁の年調ソフトで入力したものを会社で印刷し、会計事務所で取りまとめて、市販の年調ソフトで年末調整を進めるという方法も考えられます。
会社が従業員に年調ソフトを推奨することで、手書きによるミスがなくなり、控除証明書の確認作業の負担も軽減することができそうです。
年調ソフトを利用するにあたっての問題点?
現実的な問題として、中小企業にはパソコンやスマートフォンの操作が苦手な従業員が多い会社もあり、国税庁の年調ソフトの利用を勧められないという問題があります。一部の従業員は電子データで資料を受け取り、一部の従業員は紙ベースで資料を受け取ることになると、統制をとるための手間がかかります。この場合、紙ベースで統一したほうが作業が進めやすいかもしれません。
また、国税庁の年調ソフトは、マイナポータルとの連携でその効果を発揮できますが、これにはマイナンバーカードの取得等が必要で、マイナンバーカードの取得率が低いことも、国税庁の年調ソフトを利用する妨げとなるでしょう。生命保険会社や金融機関で、電子データを利用できるサービスが提供されていることも必要となります。
今年の年末調整では、どのように利用する?
国税庁の年調ソフトは、利用が浸透すれば、会計事務所にとってもメリットがあるものといえるでしょう。ただ、まだまだ中小企業で導入するには、IT関連企業等の電子データの利用が得意な企業以外は、問題点が多いのが現状です。
とはいえ、今後の動向として、国全体でIT化が進んでいくことが予想されるので、試験的に運用をはじめてみるのもよいでしょう。パソコンやスマートフォンが苦手な従業員が多い場合は、会社で国税庁の年調ソフトを用意し、その利用をサポートできるように研修等を行うのもひとつの方法です。