Management Columnコロナ禍で急増…個人事業主の廃業手続きのポイント
政府や各自治体は、コロナ禍の中で、様々な給付金・助成金の支援策を打ち出し、事業を行っている人は、できるだけ営業を継続するように頑張ってきました。しかし、第三波で新規感染者が増加し、飲食店の時短要請や外出自粛等のニュースが目立つようになってきました。ここが頑張りどころともいえるのですが、会計事務所によせられる相談の中には、「営業をしていても赤字が増えるばかりで、店をたたみたい」というものも見受けられます。
今回は、個人事業主に焦点をあて、廃業する場合の税務・労務手続きの流れや気を付けるべきポイントをお伝えします。
個人事業主の廃業手続きに関係する書類
個人事業主が廃業するときは、税務署・労働基準監督署等に廃業に関係する書類を提出して行います。
- 税務署
- 「個人事業の開業・廃業等届出書」「所得税の青色申告の取りやめ届出書」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。消費税の課税事業者の場合は「事業廃止届出書」も必要です。
- 労働基準監督署・ハローワーク
- 継続して従業員を雇用している場合は、「確定保険料申告書」「労働保険料還付請求書」「雇用保険適用事業所廃止届」「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」を提出する必要があります。また、社会保険に加入している場合には、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」等の書類を提出する必要があります。
このほかに、許認可や届出がないと営業ができない業種については、保健所等の行政機関で廃業手続きを行う必要があります。
個人事業主の廃業手続きの流れ
個人事業主が廃業することを決定したら、まず、営業終了日を決め、事業を廃止します。その後、営業に関係する債権債務の整理等を行います。具体的には、資産売却、売掛金回収、買掛金・借入金・未払費用の支払いです。同時に、廃業に関する各種届出も行います。これらが終了し、事業に関係する所得が確定すると、確定申告が可能となります。
ケースによっては、手続きが前後する場合もありますが、すべての精算を終えてから行政手続きを行うと、スムーズに進めることができます。
個人事業主の廃業手続きのポイント
廃業手続きは、事業主自身でも行うことができますが、会計事務所がサポートするのであれば、以下の点をチェックするとよいでしょう。
- 予定納税の減額申請が可能かどうか
- 個人事業主が廃業を考えるのは、資金繰りが厳しいケースが多いと思います。予定納税を行っている場合、廃業する年の所得が予定納税基準額を下回るのであれば、減額申請を行うことで、必要な現金を少なくすることができます。
- 青色申告の繰戻還付
- 所得税の確定申告時に、廃業後の必要経費を含めて事業所得を計算します。このとき、青色申告を行っており、廃業年分の所得が赤字で前年分や前々年分が黒字の場合には、青色申告の繰戻還付が可能となります。
- 固定資産税の軽減
- 個人事業主が事業で使用していた店舗等を、廃業を機に自宅に転用する場合があります。この場合には、居住用の敷地となるので、固定資産税を軽減できる可能性があります。