Management Column配当金の課税と確定申告
最近の経済ニュースでは、日経平均株価が3万円を超えたことで、盛りあがりをみせています。コロナ禍の中での景気対策が功を奏しているのでしょうか?
確定申告の処理でチェックポイントの一つに、株式による収入があるかどうかがあります。株の売買だけでなく、配当金の受け取りがある場合もあり、申告の有無や課税方法の選択判断が複雑です。今回は、配当金に関係する確定申告のポイントについてまとめました。
配当金の課税方法
上場企業から受け取る配当金については、源泉徴収が行われているので、確定申告をしなくても問題ありません。しかし、会計事務所としては、確定申告をしたほうが有利かどうかを判断し、有利であれば確定申告をすすめたいですね。
配当金の課税方法には、「源泉徴収」「確定申告での総合課税」「確定申告での申告分離課税」の3つがあります。上場企業から受け取る配当金は、所得税と住民税をあわせて20.315%の税金が天引きされています。したがって、この20.315%の税率より低い税率の人であれば、総合課税で確定申告をすることで、税金が減額か還付になる可能性が高いといえます。源泉徴収ありの特定口座で、配当金は株式数比例配分方式で受け取ることを選択していない場合に、上場企業の株式等の過去の繰り越し分も含めた売却損と配当金を相殺できるときには、申告分離課税で確定申告をすることで、税金が減額か還付になります。
配当金の確定申告をするほうが有利な場合
まず、上記でも説明したように、上場企業の配当金の源泉徴収税率である20.315%(所得税15.315%、住民税5%)を下回る税率の場合は、確定申告をしたほうが有利となる可能性が高いといえます。このとき、所得税の確定申告を行うことで、住民税の申告も自動的にされます。
さらに、住民税の税率が高いため、所得税は確定申告する一方で、住民税については源泉徴収の5%で終わらせたいというケースもあります。この場合には、住民税は申告不要を選択します。
実際には、各種控除額等も考慮して税金が決定されるため、配当金の確定申告をしたほうが有利かどうかは、確定申告書を作成してシミュレーションするとよいでしょう。
総合課税か申告分離課税か
配当金の確定申告で、総合課税と申告分離課税の併用はできません。
通常、納税者の税率が源泉徴収税率よりも低い場合には、総合課税により確定申告を行います。株式の売却損と配当金を相殺して源泉徴収された配当金の税金を還付してもらいたい場合には、申告分離課税による確定申告を行います。
しかし、納税者の税率が源泉徴収税率より低く、かつ、株式の売却損と配当金を相殺したい場合はどうでしょうか?この場合、総合課税で確定申告を行う方法と、申告分離課税で相殺を行い配当金については源泉徴収で終わらせる方法と2つの方法があります。売却損の金額が小さい場合や、所得が少ない場合には、総合課税で申告したほうが有利となることが多く、売却損を配当金と相殺しないで次年度以降に繰り越すことも可能です。
配当金の確定申告は複雑です。所得が高く税率が高い人が配当金を受け取っている場合には、源泉徴収で終わらせるほうが有利であるため簡単です。しかし、最近では、さまざまな所得層の人が株式投資を行っているため、配当金の確定申告についての判断をしっかり行わなければならないケースも増えてきています。