Management Column物価上昇に備えて会計事務所がクライアントにできるアドバイス
緊急事態宣言などが出ていないゴールデンウィークは3年ぶりということで、人手が増えることが予想されています。新型コロナウイルスの拡大状況など心配ではありますが、物価上昇による経済への影響が懸念されていることもあり、ゴールデンウィークで消費が拡大し景気へのよい影響があるとよいと思います。
今までのコロナ禍は経済に大きな影響を与えましたが、収束すれば経済が活発になると予想できます。しかし、今回の物価上昇は、ウクライナ情勢がどのように変化するか予想しづらく、先が見えません。会計事務所では、クライアントの利益を確保するために、どのようなアドバイスをしていけばよいのでしょうか。今回は、中小企業における物価上昇の対応策や会計事務所ができるアドバイスを考えてみました。
政府の物価上昇への対応策は?
政府は、緊急経済対策と称して中小企業に対しては、日本政策金融公庫などのセーフティネット貸付における金利引き下げや、日本政策金融公庫などの実質無利子・無担保融資について申込期限を9月末までに延長する対策を打ち出しています。しかし、中小企業にとっては根本的な対応策とはならず、長期的な視点で経営を変えていかなければならないでしょう。
物価上昇にはさまざまな原因が考えられますが、大きな原因の一つとして、円安の進行が考えられます。為替レートは、その通貨の需要と供給のバランスに決定されます。短期的な変動要因として中央銀行の為替介入があげられるため、政府が為替介入を行うかどうかも注目されています。しかし、為替レートは自国のみでなく他国にも影響を及ぼしますし、その影響も苦労のわりに短期的なものとなるために、行われない可能性があります。
為替レートの中長期的な変動要因の一つに、金利差があげられます。日本では、経済成長を支えるために超低金利政策がとられてきました。一般的に、金利が低いと円安傾向となると言われており、日本の金利も引き上げを行うことが検討されています。
販売価格切り上げを行うにはシミュレーションが必要
中小企業では、原材料価格上昇による利益の圧迫が心配です。もちろん、仕入れルートの見直しや、代替できる安い原材料へのシフトなど見直すべきところもあるかもしれませんが、今までもコロナ禍でコスト削減に取り組んできた中小企業にとっては、限界と感じるケースもあるのではないでしょうか。そこで、物価上昇を販売価格に転嫁することが考えられ、すでに販売価格の切り上げに踏み切っている企業も多くあります。
中小企業では、コスト削減と同時に販売価格を切り上げる必要があるのですが、販売価格の切り上げで売上が減少することが懸念されます。どのコストをどの程度削減し、物価上昇分をどの程度販売価格に反映させるのがよいのか、どのくらいの販売数量を目指さなければならないのかをシミュレーションする必要があります。このシュミュレーションを行うには、既存の試算表を組み替えた変動損益計算書や、直接原価計算の考え方が有効です。会計事務所スタッフは、これらの計算方法の知識を身につけることで、よりクライアントに寄り添ったアドバイスが可能になるでしょう。
賃金上昇に備える
賃上げ政策は、現政権の中心的な政策ともなっており、最低賃金も少しづつ上がってきています。また、賃上げを実施しなければ、従業員の生活が物価上昇に対応できないかもしれません。さらに、企業にとっては賃上げをしていかなければ人材確保が難しくなります。
賃上げをすることで優秀な人材を確保し、企業が提供する商品やサービスの付加価値を高めていく企業努力が、これからの物価上昇に対応できる企業となっていくのではないでしょうか。人件費をおさえるのではなく、人材の確保と育成に力を入れていくことが課題となっていくと考えられます。