Management Column現金残高が多くなってしまう原因と対処方法
会計事務所では、日々の記帳を行い、1年のまとめとして決算処理を行い、決算書や申告書を作成します。資料をもとにしっかりと記帳と集計を行っているはずなのに、決算書をみると数字がおかしいことはよくあることです。つじつまが合わない箇所については、クライアントに確認するなどの方法で修正していきます。
このような決算書上のトラブルの中でも、現金残高が多い場合の対処方法に頭を悩ませている会計事務所スタッフも多いのではないでしょうか。現金残高が多いのは、何が原因なのでしょうか。
経費の過少計上
帳簿上の現金残高が多くなってしまっている理由でまず頭に浮かぶのは、経費の計上し忘れです。例えば、領収書を紛失してしまったケースがあげられます。もし領収書を紛失してしまっても、支払った金額や相手先、日付などのメモを残してもらうようにしましょう。
単なる領収書のもらい忘れではなく、仕事の紹介料などを支払ったケースで領収書をもらえないケースがあります。この場合、もしかしたら相手先に売上に計上したくない理由があるかもしれません。領収書を発行し経費を計上することで、税務調査の際に相手先の売上に計上していないことが判明してしまうかもしれないので、わざと経費に計上していないケースもあり得ます。会計事務所側としては、書類がなくクライアントからの説明もない場合で現金を使ってしまっていたケースでは、経営者のプライベートな使用と判断するしかありませんので、使ってしまった現金を会社に戻すように提案することになるでしょう。
経営者への貸付金として処理した場合には
会社形態である以上、会社のお金と個人のお金は厳密に区分することが求められます。もし、会社のお金を経営者のプライベートに使用した場合には、役員への貸付金として処理します。会社の決算書上で役員貸付金が多いと、税務上のトラブルになりやすいので要注意となります。一回ごとの金額が少なくても、これが累積することで決算時には大きな金額となってしまうことも多いです。
貸付金に対しては、会社は原則として利息を計上しなければならないことになっています。利息を現金で受け取っていなければ、さらに役員貸付金が増えてしまいます。そして、この利息は法人税の対象となり税金が増えることになります。税務調査で、多額の役員貸付金が返済されず長期間そのままになっていると、賞与とみなされてしまうこともあります。その賞与は税務上、損金と認められず、さらに所得税の対象にもなります。
国税庁 No.2606 金銭を貸し付けたとき現金残高を適正に保つには
現金残高が増えすぎてしまった場合に対処できる方法は、その原因を究明して帳簿を修正するしかありません。その原因が経営者への貸付金であれば、少しずつ役員報酬から返済していくという方法があります。役員貸付金が累積してしまってからでは対応が難しいですので、クライアント側で、現金出納帳を作成してもらい、日々、現金残高をあわせていくとよいでしょう。
また月次決算の際にも、実際の現金残高と帳簿残高を突き合わせ、差額が発生している場合には早期の原因究明を行うことが大切です。税務調査でも、実際の現金残高と帳簿残高の差額に注視しています。急な税務調査で慌てないためにも、現金管理は大切といえます。