Management Column会計事務所業務の今と昔
会計事務所では、税理士試験やお盆休みが終わり、業務が本格的に始動しはじめる時期ではないでしょうか。8月は繁忙期ではありませんが、休み明けは業務が集中し、コロナ禍の影響もあって忙しい方も多いと思います。1つのクライアントに対して1人の担当者だけでなく、他のスタッフも対応できるような意識を持っておくとよいでしょう。
現在、コロナ禍で会計事務所の業務の流れも、リモートワークの活用が多くなるなどの変化がみられます。では、もう少し長い期間でみると、会計事務所の業務はどのように変化してきているのでしょうか。余裕があるときに、昔の業務についてご存知の方にお話を聞くのも楽しいかもしれませんね。また、会計事務所の業務の変遷を振り返ることで、将来の展開について考えるきっかけとなるかもしれません。
手書きで記帳をしていた時代
現在、会計事務所で業務を行っている方にとっては、手書きで記帳をすることは考えられないことです。しかし、昔は手書きで記帳をしていました。昔といってもそれほど昔ではなく、1970年代には、まだ手書きが主体でした。ご年配の方には、1960年代に電卓もなくそろばんで手書き記帳をしていたという思いでを持つ方もいらっしゃるでしょう。昔は、税理士試験もそろばんで計算していた時代があったんですが、今では信じられませんね。手書きの時代には、いかにしてミスを防止するかに重点が置かれ、貸借の合計を一致させるなどの手法が重視されていました。
簿記の検定試験や税理士試験で、手書きで仕訳や試算表の集計をすることに疑問を感じる方もいるかもしれません。仕組みが分からなくても技術的な側面だけを追うことで、合格できる点数をとることも可能かもしれません。しかし、手書きで仕訳をして電卓で集計をし、決算書を作成するという一連の流れの中で数字の意味を知ることは、今は実務ではなかなか経験できません。数字の裏にある取引を想像し推察することができるのは、数字の流れを想像することができることで可能となります。受験を目指す方には、基礎をおろそかにすることなく、合格を目指してほしいと思います。
コンピューターの導入
手書きで記帳を行うことの問題点は、手間とミスの多さでした。1970年代後半から1980年代、コンピューターが発達し、会計事務所でもコンピューターを導入することができるようになります。コンピューターが導入されたといっても、最初から全てが自動化されたわけではありません。コンピューターの扱い方やキーボードの操作など、会計事務所スタッフには革新的といえる業務の変化だったといえます。当初は、汎用型のWindowsパソコンはありませんので、会計専用機が主流でした。専用の用紙に手書きで仕訳を書き、これをOCRで認識してコンピューターに入力するという方法も行われていました。
1990年代になってWindowsパソコンが普及し、会計事務所やクライアントで共通の会計ソフトが使用することができるようになって、やっと今の会計事務所業務の形態に近づきます。
インターネットの普及とクラウド会計
2000年代、一般にもインターネットが広がり、会計ソフト業界でもクラウド会計の開発がはじまります。しかし、インターネット回線の速度、機密性、使い勝手など、さまざまな要因からクラウド会計はすぐには普及せず、一般的になったのは2010年をすぎ、つい最近のことではないでしょうか。
最近ではコロナ禍によりリモートワークが推奨され、クラウド会計の必要性は高まっています。
会計事務所の将来性
会計事務所の業務の変遷を振り返ると、短期間で業務が効率化され、会計ソフトの発展により、高度な知識がなくても決算書の作成が可能となりました。もちろん、中小企業であっても、作成された帳簿のチェックや税金の知識は必要ですので、会計事務所は必要です。しかし、今後、よりAI化が進み、人とコンピューターの対話によって、ある程度の会計や税金の疑問が解決できるようになったらどうでしょうか。従来の業務のみを行う会計事務所を必要とする人は一定数は存在すると思いますが、その数が少なくなってしまうかもしれません。
今後は今まで以上に、経営者の気持ちに寄り添い、アドバイスやコンサルタントのできる会計事務所が必要とされてくる時代となるのではないでしょうか。