Management Column会計事務所の海外進出への対応
新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向にあることを受けて、水際対策が緩和され、日本に訪れる外国の方が増えてきました。通勤で駅周辺を利用される方など、路上で外国語が聞こえることが多くなり、緩和を実感される方もいらっしゃるのではないでしょうか。海外では、新型コロナの新規感染者が少し増加傾向にあり第8波が警戒されていますが、今後は実際に足を運ぶという方法での海外との交流が増えていくことが予想されます。
大手税理士法人以外の会計事務所では、日本国内だけで業務を行うことが多いといえるでしょう。しかし、今後、海外との交流が増えていくことを考えると、中小の会計事務所で何が対応できるのかを考えていくのも、他の会計事務所との差別化をはかり生き残っていくためによいのではないでしょうか。
海外進出する場合の会計や税務のサービス
会計事務所の税理士やスタッフが海外を訪問・勤務することを想定した業務には、どのような業務があるのでしょうか。想定できるのは、日本の企業が設立した海外子会社や支店に対して会計や税務のサービスを提供することです。特に中小企業では、海外に関する会計・税務の専門的ノウハウがある人材が少ないため、会計事務所が対応可能であれば他の会計事務所との差別化を図ることができます。
税理士は日本の税法の専門家ですので、海外での会計基準や税制を理解するには、現地で知識のある人材の力を借りる必要があるかもしれません。現地スタッフを雇用する方法もあります。もちろん、日本の税法知識も不可欠で、外国税額控除や移転価格税制などを理解し対応できるようにしなければなりません。
会計・税務以外のサービス
会計事務所で海外進出を検討するのであれば、会計・税務以外にも経営や法律手続き以外のサービスに対応できると便利です。例えば、現地法人への経営アドバイス、現地での課題を解決するサポート、在留資格取得のサポートなどが考えられます。専門のコンサルタントや専門家と業務提携するのもよいでしょう。日本のクライアントや会計事務所にとっては、やはり海外での活動には政情不安などのリスクが伴いますので、リスク管理も行う必要があります。
会計事務所で行うことが想定される海外に関係する業務のひとつに、グローバル展開している親会社に提出する資料作成サポートがあります。この業務では、クライアントである海外子会社の経営や財務の資料を作成し定期的に提出します。また、クライアントに現地子会社や現地支店がある場合、クライアントのために経営や現地で作成されている財務資料が適切であるか監査を行ったり現地視察を行ったりすることもあります。
会計事務所が海外進出するメリット
会計事務所で海外での業務が必要な場合、必要な知識や経験を持っている日本や現地の専門家に依頼する方法もあります。コストや手間を考えると、他の専門家に依頼する方法が簡単でスピーディといえます。しかし、この方法だと事務所内に海外進出サポートに関するノウハウが蓄積しづらいというデメリットがあります。
今後の会計事務所の成長発展を考えると、事務所内で海外業務に対応できる体制を作っていくことを検討するのもよいでしょう。クライアントに海外子会社や支店がある場合にはチャンスと考え、積極的に事務所内で現地の税務について理解を深める研修を行ったり語学力を高めたりし、事務所内にノウハウを蓄積するとよいでしょう。海外子会社や支店に現地視察に行くことで現地での人脈作りが可能になり、その国の海外進出サポートに強い会計事務所として差別化を図ることまで視野に入れることができます。