Management Columnインボイス制度の影響
確定申告の期限まで、あと1か月ほどとなりました。個人事業主の決算を行ったり、給与所得以外の収入があった方の相談にのったりと、会計事務所の確定申告業務も本格化していることと思います。
インボイス制度の登録期限がせまっていることもあり、登録するかどうかで影響のある事業者について検討しなければならず、確定申告とあわせてクライアントに対する確認事項も多いですね。会計事務所としては、課税事業者については登録を前提に話を進めてしまいがちですが、中には登録について疑問を持つクライアントもいます。今回は、インボイス制度の登録の有無による影響について考えてみました。
もともとが免税事業者であった場合の取引への影響
免税事業者の売上先が事業者の場合には、免税事業者からの仕入れでは仕入れ税額控除ができなくなるため、免税事業者との取引を見直されるというリスクが発生します。しかし、売上先が一般の方ばかりで、モノやサービスを購入しても特に費用計上するわけではない場合には、登録の有無によって取引に影響することはほとんどないと考えられます。このため、登録の有無については、取引への影響という視点で判断していく必要があります。
もともとが免税事業者であった場合の消費税への影響
もともと免税事業者であった方は、登録を行うと消費税の申告・納税義務が発生するので、インボイス制度の影響は大きいと考えられています。消費税の申告・納税を避けるために登録をしない選択をする事業者もいると思います。
消費税は、大きくみると売上に対する消費税から、仕入れに対する消費税を引いて計算します。消費税の申告・納税をしていない場合には、売上分の消費税が得だと感じてしまいがちですが、その分、仕入れに対する消費税を払っているため、得している部分は課税売上に対する消費税から、課税仕入れに対する消費税をひいた部分になります。利益率が大きい場合には、免税事業者が課税事業者となることで、今まで納付しなくてもよかった消費税を納付する影響が大きくなります。しかし、事業がうまくいかず赤字が発生している場合には、課税事業者なら還付請求できた消費税を損しているかもしれません。また、課税されない海外売上が多い場合にも、還付が発生するケースがあります。課税事業者になるからといって、必ずしも損するとは限りません。ただ、消費税の申告・納付には手間がかかることだけは確かです。また、還付が認められないケースもありますので、注意が必要です。
国税庁 No.6613 免税事業者と仕入税額の還付もともとが課税事業者であった場合の影響
もともとが課税事業者であった場合には、登録してもしなくても消費税の申告・納税義務があるため、消費税への影響はありません。登録しないことによる取引への影響を考えると、登録したほうがよいでしょう。しかし、これも売上先が一般の消費者ばかりのケースでは、取引への影響がないため、経営者が登録したくないと思えば、登録しなくても影響はないといえます。会計事務所としては、クライアントがもともと課税事業者であったとしても、インボイスへの登録の意思をしっかりと確認する必要があります。
そのほか、懸念されるのは課税事業者が免税事業者と取引し、仕入税額控除ができないケースです。取引金額が少ない場合には影響も少ないと考えられますが、取引金額が大きい場合には大きく影響します。免税事業者は取引を検討されるリスクがありますが、課税事業者にとっても「仕入税額控除をしたいから課税事業者になってください」とは言いづらく、取引先が免税事業者で他の取引相手を選ぶという選択ができない場合には、納付税額が大きくなるリスクを考えなければなりません。