Management Column確定申告と申告納税制度について
いよいよ、確定申告も本格化してきましたね。年に一回、まとめて資料をいただくクライアントや、確定申告に悩んで今回から会計事務所に依頼をする方もいらっしゃいますし、商工会議所などで開催される相談会への対応など、大忙しのシーズンです。忙しい時間の合間に、どうして日本の義務教育で、簿記や租税の基礎知識を教えないのだろうと感じることはありませんか?
今回は、税理士や会計事務所での業務にかかわる方にお聞きした内容をもとに、申告納税制度などについて考えてみました。
確定申告相談とコミュニケーション能力
確定申告前には、商工会議所や税務署で相談会が開催されるところも多いですね。税理士会に所属している税理士に依頼があるので、経験された方も多いと思います。
普段はサラリーマンで、不動産の譲渡などを行ったために確定申告が必要となり相談会にいらっしゃる方は、通常は年末調整を行っているため、確定申告の知識がないことがほとんどです。このような方の相談は、さまざまなケースがあり申告での注意点もありますが、取引回数は1回ですし、注意点も把握しやすく相談に応じやすいと思います。
ただし、相談に応じるためには、相談される方がどの程度、確定申告について理解しているかによって質問の仕方が変わってきます。確定申告の相談業務をしっかりと行うためには、高いコミュニケーション能力が必要だなあと感じます。
e-TAXと確定申告
最近では、働き方改革や多様な働き方を認める会社が多くなってきたことから、個人で事業をはじめられる方も多くなってきました。
国税庁ではe-TAXを運用して、誰でも簡単に確定申告ができるように推し進めています。また、誰でも簡単に帳簿作成が可能といった雰囲気で個人事業用の会計ソフト・アプリが安く販売されています。では、まったく確定申告や簿記の知識がない方が、e-TAXや会計ソフト・アプリでしっかりとした会計帳簿を作成して申告できるかというと、なかなか難しいところです。会計事務所でも、「今までは自分で確定申告をしていたが、忙しくなってきたので会計事務所に依頼したい」といった相談がよせられ、前年度の確定申告書や帳簿を見て頭を抱えるケースもあるのではないでしょうか。
もちろん、このような方にアドバイスや指導をして、しっかりとした確定申告を目指していくのが会計事務所としての役割です。会計や税務が難しいからこそ、会計事務所という職業が成り立つといった側面もあります。とはいっても、申告納税制度を採用している以上、日本の義務教育で、簡単な簿記や確定申告の概要くらいは教えるべきだと感じることがあります。
確定申告と報酬
確定申告の相談にいらっしゃる方の中には、事業をはじめたばかりで会計事務所への報酬の支払いが難しい方も多くいらっしゃいます。そのような方には、安い報酬で依頼を受けて事業がうまくいきだしたら報酬をあげるという方法をとったり、可能であれば自分で申告をしてもらうという方法をとってもらうことをすすめたい気持ちになります。
とはいっても、最近のシステムは複雑になっており、まずは個人情報保護の手続きにのっとってマイナンバーの取得を行ったり、依頼書を作成したりというところからはじめなければならず、簡単な確定申告の代理でも、それなりの手間がかかります。はじめての依頼主で個人事業の確定申告となると、必要な書類をそろえてもらったり質問をしたりという時間も必要ですし、2~3日では終わらないこともあります。
手間をかけないために、相談される方の提出したもののみで確定申告を簡便的に終わらせるという方法をとることもできるかもしれません。しかし、会計事務所としては、相手の気づかない点や知識の足りない点を補い、しっかりとした確定申告を目指すとともに、できるだけ後で問題が生じないよう、また、できるだけ納税額が少なくなるよう、さまざまな配慮をしたいものです。そう考えると、あまり安い報酬設定をするわけにはいかない場合もあります。確定申告時期でさまざまな相談が増えると、会計事務所としてのサービスについても、いろいろ考えさせられますね。
確定申告は、会計事務所としての役割を果たすための腕の見せどころでもあります。体調に気をつけて、乗り切りましょう。