Management Column新型コロナ対応で赤字企業に特例適用で税還付
新型コロナの感染拡大の影響で、オリンピックの延長やイベントの中止等、経済への様々な影響が出てきています。世界中が混乱している中でのオリンピック開催や完全な中止よりは、延長という判断は妥当なものだと考えられますが、これに伴う様々な影響が気になるところです。今までオリンピック開催に向けて予定を組んできた様々な日程が、どのように変わっていくのか、今後の情報が待たれます。
このような状況下で、政府は新型コロナ対応で赤字の企業に対し、災害時の特例を適用して、税還付を行う方針を固めました。現時点で国税庁からの詳細な発表はありませんが、災害時の特例は以前からある制度です。今回は、災害時の特例について紹介し、この適用について考えていきます。
災害により被害を受けた場合の災害損失欠損金の繰戻し
災害損失欠損金の繰戻しとは、災害により損失が生じた場合に、法人税などが還付されるケースです。
災害により生じた損失の額は、その損失が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入されます。この結果、災害損失欠損金額が発生した場合、その事業年度開始の日から1年(青色申告では2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち、災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付請求ができます。
通常の欠損金の繰戻し還付制度と違い、大企業の場合・前々期に法人税額が発生している場合・白色申告の場合などでも活用することができることに特徴があります。
国税庁 災害等にあったとき 災害により被害を受けた場合の法人税の特例新型コロナ対応で災害損失欠損金の繰戻しを適用
新型コロナによる損失を「災害損失」とみなすことで、通常の欠損金の繰戻し還付制度より還付できる企業の範囲が広がります。新型コロナによる影響は、零細な飲食店やイベント業界等、白色申告の多い業界でも打撃が大きく、繰戻し還付を受けることが可能であれば、経営への影響が少なくなると考えられます。
とはいっても、この制度は、過去1~2年の間に法人税を納めた企業が、新型コロナ対応で欠損金が出た場合に利用できる制度です。もともと赤字で法人税を納めていない場合には利用できず、また、損失が還付だけで補えることも少ないでしょう。助成金や借入等の活用・環境変化を見込んだ経営転換等を同時に行っていく必要があるでしょう。
災害損失欠損金額に何が含まれるか
新型コロナ対応での災害損失欠損金額は、給食業者の学校の一斉休校に伴う食材廃棄・感染者発生による飲食店やライブハウスの消毒・設備交換等の費用が想定されます。詳細な適用条件は国税庁の発表があるまで分かりませんが、単純な売上減少は、災害損失欠損金額に含まれない可能性が高いといえます。
新型コロナ対応で赤字になってしまう企業がクライアントになっている会計事務所は、今後発表される災害損失欠損金の繰戻しの適用条件等の情報に注意していきましょう。