Management Column税金は何に使われているのか?国の予算と方向性
新型コロナウイルスの新規感染者数は、発表された数字をみると徐々に減少傾向にあるように思えます。しかし、医療体制はひっ迫したままで、ワクチン接種が遅れている世代や、ワクチンを打つことのできない子どもへの感染が問題となってきています。長期化するコロナ禍で、ウイルス感染を警戒しつつ経済活動を行っていかなければなりませんが、医療が行き届かず弱者に配慮できない社会では、国の在り方に疑問を感じざるをえません。
会計事務所や税理士は、税金と深いかかわりのある職種です。国の在り方は、税金の使い道に大きく影響します。日程は未定ですが、今秋に開催される衆議院選挙は、国民が政治に関わることのできる大きなチャンスといえるでしょう。
衆議院選挙に向けて、会計事務所スタッフの視点から考えると、税金の使いみちについてチェックしておきたいところです。そこで今回は、税金の基礎知識として、納められた税金が何に使われ、将来はどうなっていくのかについてお伝えします。
国の予算と税金
国の財政では、1年間の歳出と歳入を予定するために「予算」の編成が行われます。予算案は、1月に召集される通常国会において話し合われ、議決があって初めて成立します。具体的には、衆議院予算委員会で話し合われた後、関係者などからなる公聴会を経て、衆議院本会議にて採決されます。同じ流れで参議院でも採決が行われますが、参議院が衆議院と異なった議決をした場合には、衆議院の議決が優先されます。このことからも、衆議院議員を選ぶ選挙は国民にとって大切なものだということが分かります。
コロナ禍でニュースなどでよく耳にする「補正予算」とは、大きな災害や社会経済の状況によって予算では足りない場合に、臨機応変に使うことができるように用意しておくものです。
財務省 予算・決算(国のお金の使い道)2021年度予算案の内訳
2021年度予算案をみると、国の一般会計歳出106.6兆円の主な内訳は以下のようになっています。
- 社会保障(年金、医療、介護、子ども・子育てなど)…33.6%
- 国債費(元本返済と利払い)…22.3%
- 地方交付税交付金等(地方団体に配分する経費)…15%
上記以外では、公共事業5.7%、文教及び科学振興5.1%、防衛5%、その他13.4%という構成です。
この予算案から、社会保障に使われる税金が多く、それに次いで国際の返済の負担が大きいことがわかります。財務省のWebサイトによると、日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあるということです。
財務省 これからの日本のために財政を考える日本の財政の今後
人口における高齢者の割合が増加することで社会保障費が増加し、日本の財政は悪化しています。このため、働く世代に集中してしまう社会保障費の負担を、あらゆる世代で公平に負担するために消費税が引き上げられてきました。消費税の特徴は、景気に左右されにくく税収が安定し、特定の人に負担が集中しないことです。これに比べ、所得税は勤労世代を中心とした負担となっており、働くことができる世代の減少で税収が減ることが予想されています。法人税は、景気に左右されやすいという特徴があります。
国民の社会保障の受益と負担のバランスをみると、日本は主要先進国と比べ、国民の負担が少なく受益が多くなっているそうです。このバランスを回復するためには、GDPの拡大・社会保障支出の見直し・国民負担の見直しという3つの方法が考えられます。
国政をどの政権が担うことになったとしても、財政を立て直さなければならないのは同じです。これらを踏まえたうえで、国民と真摯に向き合い、国民の意見を反映して国の方向性を考えていくことが、政治にとって大切なのではないでしょうか。例えば、国の方向性によって、同じGDPの拡大を目指すにしても、軍需産業に力を入れるのか、特定の企業に有利な方策をとるのか、社会福祉や教育の分野に力を入れるのか変わってきます。