Management Column令和3年度の年末調整書類と変更点
新型コロナウイルスの新規感染者数が急速に減少し、医療機関のひっ迫も緩和されつつあるようですが、秋の行楽シーズン後の再拡大が懸念されています。いつ、どのような状況下で業務に支障が出るかわからない状況ですので、余裕があるうちに、できることを進めておきましょう。
国税庁のWebサイトで、9月17日に令和3年度分年末調整についての情報が公開されました。コロナ禍前に比べると、一か月ほど早い公開です。会計事務所にとっては、その分、早めに年末調整の準備に入ることができるので助かりますね。今回は、令和3年度分年末調整についてのポイントについてまとめました。
令和3年度分年末調整の変更点
令和3年分の年末調整は、基本的な事項について変更点はなく、昨年の令和2年分と同じ手順となります。昨年の年末調整では、令和2年度税制改正で基礎控除や給与所得控除などの見直しが行われたために、年末調整書類の様式も大幅に変更されました。特に、「ひとり親控除」や「寡婦(寡夫)控除」については、適用要件が以前とは異なりクライアントへの説明も行わなければなりませんでした。今年は、新たな変更点はないものの、引き続き適用要件などに注意して年末調整を行いましょう。基礎控除申告書も、記入漏れや提出漏れがないように注意しましょう。
なお、令和3年以降は、税務署主催で実施していた年末調整説明会が開催されないこととなったそうです。コロナ禍の影響だけでなく、国税庁がWeb動画などで一般向けに分かりやすい情報発信をしていることの影響かもしれませんね。もし、この説明会に毎年参加している方がいましたら、今年以降は開催されない予定となっていますので、注意してください。
各種申告書と記載例
令和3年度の年末調整で必要な書類は、昨年と同様、以下の書類となります。
- 令和3年分扶養控除等(異動)申告書(昨年末に提出を受けていない場合)
- 令和4年分扶養控除等(異動)申告書
- 令和3年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 令和3年分保険料控除申告書
これらの書類の様式を確認するとわかるのですが、税務署長などに提出する源泉所得税関係書類の押印が必要ないとされたため、これらの年末調整書類についても、押印をする必要がなくなり書類上の押印箇所もなくなっています。
会計事務所の年末調整業務の際には、押印されているかどうかのチェックをしていたと思いますが、これからはそのチェックは不必要となります。押印がないと書類を再提出してもらわなければなりませんので、業務の効率化につながりますね。
電子化に向けた取り組み
日本では、諸外国に比べて遅れていたIT化を推進するべく、2021年9月1日にデジタル庁が発足されました。税務面においても、国税庁では電子化の取り組みを進めています。
「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」が公開されており、従業員が控除証明書などのデータを活用して書類を簡単に作成できるようになっています。これを利用することで、勤務先に、年末調整書類の電子データや印刷した書面を提出することができます。保険会社などと連携するにはマイナポータルと連携しなければならず、マイナンバーカードが必要となるなど、まだ多くの人が利用するには課題がありますが、今後は電子化が進んでいくことが予想されますので、会計事務所でも対応できるように準備を進めるとよいでしょう。
国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)