Management Column令和4年度税制改正大綱の傾向は?
12月も中旬となりましたが、年末調整は順調に進んでいますでしょうか。年末近くになり、与党から、「令和4年度税制改正大綱」が公表されました。税制改正大綱は税制改正のたたき台であり、概ね、これに従い税制改正が行われるのが通常です。細かなところまで税制改正大綱の通りに改正されるとは限りませんが、改正の大枠や傾向を知ることができるため、税務に携わる人にとっては早めに税制改正の内容を知ることができる機会なのです。
今回は、12月10日に公表された「令和4年度税制改正大綱」で気になるところをピックアップしました。
賃上げ税制の見直し
令和4年度税制改正大綱では、岸田首相が掲げていた看板政策である「賃上げ税制」の拡充に向けての項目がいくつか目につきます。賃上げの大きさに応じて控除率を段階的に引き上げ、中小企業は最大40%、大企業は最大30%に引き上げられる予定です。
中小企業では、継続雇用する従業員だけではなく、新規雇用者も含めた全体の給与総額を比較して判断し、給与総額が2.5%以上増えた場合には増加額の30%の控除が可能とされています。これに加え、従業員向けの教育訓練費を前年度より10%以上増やすことで10%が上積みされ、控除率は最大で40%になります。
大企業では、前年度からの継続雇用の給与総額から判断され、給与総額が4%以上増えれば給与総額の増加額の25%が控除可能とされています。これに加え、従業員向けの教育訓練費を20%以上増やすことで5%が上積みされ、控除率は最大で30%となります。
なお、岸田首相が自民党総裁選で掲げていた「金融所得課税」は、今後に検討を行うこととされ持ち越されています。
電子帳簿保存法の電子保存義務化が2年猶予
2022年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法では、1月1日以後に行う電子データで受け取った請求書や領収書などを、原則として電子データでの保存することを義務付けています。令和4年度税制改正大綱では、この義務化が2年猶予するという内容が盛り込まれています。
保存要件での保存ができなかったことについて、やむを得ない事情があり、かつ、質問検査権による電磁的記録の出力書面の提示や提出ができる場合には、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの2年間は、猶予されることとされています。
税理士制度
税理士制度について、「税理士試験の受験資格要件の緩和」が改正項目となっています。受験要件が緩和されることは業界の発展のためには喜ばしいことではないでしょうか。
他にも、税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備や使用人の有無などの物理的な事実により行わないことにするようです。テレワークなどに対応できるようにするための改正だと思われます。
ほかにもさまざまな項目が盛り込まれていますので、ぜひ、「令和4年度税制改正大綱」に目を通されることをお勧めします。
自民党 令和4年度税制改正大綱