Management Column政府の副業促進施策、その収入は事業所得?雑所得?
メディアの報道で、岸田政権の職能給から職務給への移行促進や副業活用を積極的に行う企業への補助金など、労働移動の円滑化を進める方針が発表されました。一方、国税庁が発表した所得税の改正案では、副業への実質的な増税が検討されています。
また、インボイス制度の導入により、免税事業者が課税事業者とならざるを得ないケースも多くあります。税金面を考えると、本業とは別に収入を補う手段として副業を選択することは、なかなか厳しい環境といえるかもしれません。
今回は、副業収入の改正案や税務ポイントをまとめました。
副業収入を事業所得にするメリット
近年、収入を得る方法が多様化し、趣味と実益を兼ねた副業を行う人も多くなってきました。たとえば、インターネットでの広告収入やせどり、自らハンドメイドした作品を販売することも副業といえます。副業を得たい人と外注を求める企業とのマッチングサイトも、多くの利用者がいます。
今までは本業に専念してほしいという企業が多く、副業禁止というケースも少なくありませんでした。しかし、政府による「働き方改革」や「新しい資本主義」といった方針により、副業を取り入れる企業も増えてきています。
副業収入がある場合、事業所得にして青色申告を行えば、黒字の場合には青色申告特別控除を受けることができ、住民税でも減税されます。赤字の場合でも給与所得との損益通算が可能となります。副業収入を雑所得にすると、青色申告特別控除や損益通算が適用できなくなり税金面では不利なので、青色申告をしている人も多いのではないでしょうか。
300万円以下の副業はすべて雑所得とする改正案
国税庁は、年間300万円以下の副業などによる収入を雑所得とする改正案を発表し、パブリックコメントの募集を行いました。副業の所得区分の判定が曖昧で明確な判断基準が必要となるという理由からの改正案ですが、実質的には増税になります。給与所得のみケースと、給与所得以外に副業があり事業所得としているケースとの課税の公平を目指したものともいえるかもしれません。
しかし、300万円以下という金額は副業収入としては大きな金額です。今まで副業収入を得て青色申告をしている人にとっては、大きな痛手となります。
税務上のポイント
改正案によると、改正後の所得税基本通達の取扱いは、令和4年分以後の所得税について適用するとされています。改正に備え、なるべく早めに対策を考えておくのがよいでしょう。基本的には300万円以下の収入の副業は雑所得となるという考えのもと、税金納付に向けた資金管理を行う必要があります。
税務上のポイントは、300万円という金額は「所得」ではなく「収入」という点です。もし、副業を行っている場合、多少の利益を無視してでも多くの販売数をあげることで収入金額は大きくなり、事業所得として申告できる可能性が高くなります。また、「特に反証がない限り」という文言が入っており、収入が300万円以下のケースでも反証を行い、事業所得とすることに合理性があれば認められる可能性もありそうです。たとえば、独立に向けた開業であることなどが考えられるでしょう。
- ※追加情報※(2022年10月7日)
- 意見公募を受けて、改正案の修正が発表されました。
所得区分について、主たる所得かどうかで判定するという取扱いではなく、帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定することと修正されました。この修正により、収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、原則として、事業所得に区分されることとなります。
青色申告を行っていた方は帳簿書類の保存が前提ですので、一安心ですね。