Management Column外注と雇用、税務上の違いや注意点は?
前回は、政府の副業促進施策に関連して、副業収入が事業所得か雑所得になるかをまとめました。10月7日に反対意見の多かった所得税の改正案が修正され、帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定するという修正が入りました。
では、副業を求める人を受け入れたい企業側では、どのような問題が生じるのでしょうか。人材を受け入れる方法として、外注か雇用かという問題が生じます。今回は、外注と雇用の違いが経営や税務にどのように影響するのか、税務上の注意点をまとめました。
外注費と給与の違い
外注費とは、自社の業種の一部を外部に委託したときに発生する費用です。したがって、外注費は幅広い意味を持ちます。例えば、清掃業務を外部に委託した場合には外注費ともいえますし、福利厚生の一環であれば福利厚生費、清掃に対する手数料と考えるなら支払手数料と考えることもできます。源泉徴収の発生しない支払いであれば、どの勘定科目に入れたとしても税務上の違いはなく、選択した勘定科目で継続して処理を行っていけば問題ないでしょう。
これに対し、給与とは、社内の従業員に支払われる報酬をいいます。同じ仕事に対して支払われる報酬であったとしても、社内か社外かによって、給与で処理するか外注費として処理するのかが変わり、税務上での取り扱いも変わってきます。
外注費と給与の判断基準と税務上の注意点
外注費と給与は、社外の外注先に支払うのか、社内の従業員に支払うのかで変わりますが、実際には契約と業務実態の観点から判断されます。原則として、請負契約であれば外注費、雇用契約であれば給与として処理することとなります。しかし、近年は多様な働き方が認められ、請負契約も業務委託契約や派遣契約などさまざまなものがあります。契約内容では判断が困難な場合、業務実態で判断することになります。たとえば、請求書発行を行っているかどうか、時間的な拘束があるかどうか、成果物を完成させるための費用の負担は誰なのか、といった観点です。
外注費の場合は、消費税がかかり、消費税の仕入税額控除の対象となります。給料の場合は、消費税はかかりませんが、仕入税額控除の対象とならず、また、源泉徴収税額が発生します。外注費でも原稿料など一定の場合には、源泉徴収税額が発生します。
外注費は、税務調査で注目されやすい勘定科目です。給与とすべき支払いを外注費にしていることを税務調査で指摘されると、源泉徴収の追徴課税が発生してしまいます。税務調査では、外注先がしっかりと確定申告をしているかどうかの調査をされることもあります。確定申告がない場合、給与として処理することを求められるケースや、外注費として認められても外注先の確定申告まで求められることもあります。
企業にとって外注と雇用、どちらがメリットがある?
企業が外注を行うメリットは、少ないコストで専門知識や技能のある人材に仕事をしてもらえる点です。必要なときにのみ仕事をしてもらえますが、その反面、緊密な連携や効率、継続的な仕事の依頼がしにくいというデメリットがあります。雇用のメリットは、企業内にノウハウが蓄積され人材育成につながり、企業の成長発展につながることです。その反面、管理の手間やコストがかかるというデメリットがあります。
税務面からみれば、外注費で計上することで消費税の仕入税額控除ができるという大きなメリットがあります。給与で処理すると、源泉徴収事務、年末調整、社会保険手続きなど、手間がかかります。外注費か給与で処理するか迷うような状況の雇用であれば、外注費で処理したほうが税金面ではメリットがあるといえるでしょう。しかし、税務調査では給与ではないかどうか厳しく調べられるため、外注費とするのであれば、契約書や業務形態についてしっかりと確認するようにしましょう。