Management Column外国為替相場の変動と中小企業の会計・税務処理
加速している円安に歯止めがかかり、政府の為替介入がささやかれています。とはいっても、政府の為替介入は長期的には効果が薄いと言われており、今後の為替相場の動向が気になるところです。円安が加速することで、日本国内の商品やサービスが購入しやすくなりインバウンドへの期待が高まっています。しかし、海外での円の価値が低くなることで、労働者の日本からの流出や輸入品の値上がりが懸念されます。
企業にとっては、為替相場は安定しているほうが安定した経営を行うことができます。為替相場が変動した場合、会計や税務にはどのような影響が出るのでしょうか。今回は、外国為替相場が変動した場合の中小企業の会計・税務について、基本的な考え方をまとめました。
外貨建取引の基本的な会計処理
外貨建取引を行った場合の換算処理の原則は、取引発生時の為替相場による円換算額での計上です。例えば、海外に出張をして飲食費などの経費として10ドルの支払いがあった場合は、支払った時点の為替相場が1ドル140円であれば、1,400円が経費として計上される金額です。海外への売上を行い10ドルで入金があった場合には、取引を行った時の為替相場が1ドル140円であれば、1,400円で売上高と売掛金を計上します。原則は取引が発生した日の為替相場ですが、直近の一定期間の平均為替相場や、直近の一定の日の為替相場によることもできます。
外貨建資産の基本的な決算時の換算方法
決算時に企業内に外貨建資産が残っていた場合、取引時の為替相場のまま計上しておけばよいのか、決算時の為替相場で換算しなおさなければならないのかが問題となります。原則としては、一定の資産を除いて決算時の為替相場で換算しなおさなければなりません。しかし、これは上場企業など証券取引法などの適用がある企業での方法で、中小企業では税法との調整や財務諸表を一般に公表する必要がないことから、ほとんどの場合、取引時の為替相場のまま計上しておくことが認められています。税法で認められている方法以外での換算を行うと申告調整が必要になるため、中小企業では、税法にあわせた換算方法を採用している企業が多いです。
例えば、ドル建ての売上を行い決算時にドル建ての売掛金が残っている場合には、取引時の為替相場のまま計上しておくことが認められていますが、決算日の為替相場や平均為替相場で換算することも可能です。為替予約を行っている場合には、円換算額が確定していますので、決済時の円換算額で計上できます。 為替相場の変動により換算を行い差損益が出た場合には、為替差損益を計上します。
なお、発生時または決算時のいずれかを選定して円換算が認められている場合には、法定の換算方法以外で換算するには税務署への届出が必要です。
為替相場が著しく変動した場合
為替市場で急速な円安が進んでいることで、「外国為替相場の著しい変動」に該当する可能性があります。著しい変動とは、決算時の為替相場に対する帳簿価格との差額が15%以上となる場合をいいます。その企業が換算方法として発生時の為替相場での換算を選定している場合には、原則として為替差損益は生じませんが、為替相場が著しく変動したときは、決算時に外貨建取引を行ったものとみなして期末換算を行うことができます。
国税庁 外貨建資産等の換算等(為替相場の著しい変動があった場合の外貨建資産等の換算)