Management Column償却資産税申告の前に知っておきたい注意点
12月も半ばとなり年末調整で忙しく、年明けにも法定調書の提出や償却資産税の申告が待っていますが、新型コロナの新規感染者数も増えてきています。体調管理やいざというときにテレワークに移行できる備えも忘れないようにしましょう。
1月に会計事務所の業務として行う償却資産税は、固定資産税の一種です。償却資産税は、土地や建物と違い毎年の申告が必要となりますが、会計事務所で税額を計算するわけではなく、市町村側が計算を行い納付書が送付されます。このため、償却資産税の申告をしていても、税金の仕組みが分からないケースも多いのではないでしょうか。今回は、償却資産税の仕組みについてまとめました。クライアントから償却資産税が高いという相談を受けたときや、市町村側が行った計算の確認の際の参考にしてください。
償却資産税の課税
償却資産には、土地や建物と違い、登記という制度がありません。課税対象となる償却資産の存在や状況などを把握するために、償却資産税の申告が義務付けられています。課税対象となる償却資産は、土地、家屋以外の事業用の資産のうち、減価償却費が法人税や所得税の計算にあたり、損金や必要な経費に算入されるものをいいます。
ただし、その性質上、特許権やソフトウェアなどの無形固定資産、牛・馬・果樹などの生物は課税対象となりません。また、いわゆる少額の減価償却資産や一括償却資産、取得価額が20万円未満のリース資産も課税対象となりません。二重課税を避けるために、自動車税・軽自動車税の対象となる資産も対象外となります。反対に、減価償却は行っていなくても、休止中であっても事業用にすることが可能な遊休・未稼働の資産、耐用年数が経過して償却済みの資産、赤字決算のために減価償却を行っていない資産、帳簿に記載されていない簿外資産など、課税対象となるものもありますので注意してください。エアコンなどで家屋と構造上一体となっている設備(附帯設備)は原則として家屋となるのですが、事業用に取り付けたものは償却資産となる場合がありますので、建物を借りていてエアコンを事業用に取り付けているケースなどで注意が必要です。
償却資産の申告
償却資産の申告先は、東京都の場合は都税事務所、そのほかの地域は市町村となります。償却資産の所在地ごとに申告する必要があるので、支店が各地にある場合には所在地ごとに資産を分けて提出する必要があります。
償却資産の申告書は簡易的な一般方式のほか、すべての資産について事業者側で評価額などを計算したうえで申告する電算処理方式もあり、償却資産の増減が多い法人などでは電算処理方式のほうが作成しやすい場合もあります。中小企業では、初年度に申告対象のすべての償却資産を申告し、2年目以降は償却資産の増加や減少についてのみ申告する一般方式で申告することが多いでしょう。したがって、償却資産の申告をするために資産台帳の情報を利用することになりますが、会計ソフトには資産台帳から自動的に申告書が作成できる機能があるものもあります。その場合でも、課税対象があっているかどうか、新規の資産がないかどうかのチェックをする必要があります。なお、市町村から送付される固定資産税の課税明細書には償却資産税の明細が記載されません。
償却資産税の税額計算
償却資産税は、法人税や所得税の減価償却に比べて簡単に計算が可能です。償却資産の評価額は1月1日時点の時価となりますが、これは取得価額か前年度評価額から、減価率を乗じたものを引くことで計算できます。計算方法は減価償却の定率法と同じです。ただし、初年度について法人税や所得税では月割計算を行いますが、固定資産税においては月割りではなく2分の1となります。
償却資産税には免税点という制度があり、課税標準額の合計が150万円未満の場合には課税されません。しかし、150万円未満であるかどうかにかかわらず申告書の提出義務があるため、償却資産が少なくても申告する必要があります。