Management Column譲渡所得の申告依頼があった場合に注意すべきこと
1月の償却資産税の申告と法定調書の提出が終わり、いよいよ確定申告時期です。確定申告時期には、飛び込みの確定申告依頼があることがあります。国税庁の確定申告書作成コーナーはスマホでも利用することができ、自分で確定申告を行う方も増えています。しかし、分かりやすく説明はしてあるものの、知識のない一般の方には理解しづらい項目もあります。
今回は、譲渡所得の申告について依頼があった場合、どのようなことに注意しなければならないかをまとめました。
譲渡所得がある場合
不動産などの資産を売却したときに、譲渡所得として確定申告が必要な場合があります。土地や建物の譲渡は、棚卸し資産に分類される場合などを除いて、分離課税制度となっています。さらに、所有期間で税率が異なります。譲渡所得金額は、収入金額から取得費や譲渡費用を差し引き、特別控除額を引いて計算します。譲渡所得は所得税の計算ではありますが、資産課税の側面があり複雑です。
譲渡所得の相談を受けた場合には、まず、取得費、取得時期、特例が活用できるかどうかの注意が必要です。
取得価額・取得時期を確認する
譲渡した不動産の取得費が書類で確認できて、それが売却価額より高く、損失が発生している場合には、そもそも確定申告が不要なケースもあります。逆に、相続で取得した先祖代々受け継がれている土地ということであれば、取得価額がわからず、5%の概算価額で計算することになり譲渡益が高額になってしまうケースもあります。
実際に相談を受けた段階では、まず、いくらで売却し、取得価額はいくらかを聞くとともに、取得価額を確認できる書類が保存してあるかどうかを確認する必要があります。また、取得時期により長期譲渡所得か短期譲渡所得かに分類され、税率が大きく異なるため、取得時期を聞く必要があります。
特例が適用できるかどうかを確認する
不動産を売却した場合、ケースによっては特別控除の適用が可能です。特別控除を受けることで、結果的に譲渡所得に対する税額がゼロになることもあるので、しっかりと確認をする必要があります。居住用の土地・建物を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から3,000万円までの控除が可能です。相続した不動産を売り、3,000万円の控除を受けることができるケースもあります。
特例の適用を受けることができそうな場合、要件をみたすかどうかのチェックと必要書類の確認が必要です。駆け込み確定申告依頼の場合には、特例適用を受けるためには申告が必要なケースかどうかを確認し、依頼人にいそいで必要書類をそろえてもらうようにしなければなりません。 譲渡所得の申告方法は国税庁からアナウンスされており、チェックリストもありますので活用していきましょう。
他の所得を確認する
よくある事例として、サラリーマンで普段は年末調整を行っている方に譲渡所得が発生し、確定申告が必要になるケースがあります。普段は年末調整のみの方だと、確定申告について理解していないこともあり、譲渡所得の申告のみを行えばいいと考えている方もいます。
譲渡所得の相談を受けた場合でも、源泉徴収票が保存してあるかどうかや、ふるさと納税、医療費など一般的な確定申告で必要な事項についてもしっかりと聞いておく必要があります。譲渡所得の書類をそろえてもらい、確定申告をしようという段階になって、源泉徴収票を紛失していて再発行の時間がかかり申告期限ぎりぎりになってしまうこともあります。