Management Columnサラリーマン対象!
「特定支出控除」で、あなたの税金を取り戻すことができるかも?
はじめに
所得税法の改正で、少しずつ利用できる人の範囲が広がっている「特定支出控除」(直近の改定は令和2年)。これは、「身銭を切って、業務にかかる支払いをしているサラリーマン」が税金を取り戻すことができる制度です。念のため、振り返っておきましょう。
「収入は給与だけ。ふるさと納税はワンストップで、医療費もあまりかからなかった」。こんな場合、普通はワンストップ特例申請と勤め先での年末調整が終わったら、個人にかかる所得税の計算は終了です。でも、「特定支出」にあたる支払いが一定の金額を超えていれば、そうではありません。確定申告で所得税を取り戻すことができます。
特定支出控除が使えるとき
その年に、個人で支払っている①以下の7つの特定支出の合計額が、②「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えるときは、その超える部分の金額を給与所得金額から差し引くことができます(所得控除)。その場合、確定申告をすることで、所得税・住民税の一部が戻ってきます。還付申告なので、その翌年から5年の間に申告すればOKです。
①7つの特定支出(1、2、3、6については「通常必要」な範囲に限られています)
1 通勤費 | いわゆる通勤費の支出 |
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2 職務上の旅費 | 職務のための出張旅行の支出 |
3 転居費 | 転勤に伴う転居のための支出 |
4 研修費 | 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出 |
5 資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための支出(取得したかどうかの結果は問わない) |
6 帰宅旅費 | 単身赴任などで、勤務地(居所)と自宅の間の旅行のための支出 |
7 勤務必要経費 | 職務に関連する図書費、職務で着用することが求められる衣服費、勤め先の関係業者(得意先など)に対する交際費等の支出で、職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの(上限は65万円) |
①で注意が必要なのは、以下の二点です。
- 7つとも、給与の支払者が証明したものに限られる。証明書の書式は、国税庁のサイトを参照(下記URL)。 「給与所得者の特定支出に関する証明書」
- 給与の支払者からの補てん金(所得税が課税されていない場合)や、教育訓練給付金等がある場合には、その金額を特定支出の金額から除く。
②特定支出控除額の適用判定の基準となる金額(以下、適用判定基準額)
その年の給与所得控除額の2分の1です。例えば、以下のような金額になります。
- 給与収入 400万円 → 給与所得控除額 124万円 → × 1/2 = 62万円
- 給与収入 500万円 → 給与所得控除額 144万円 → × 1/2 = 72万円
具体例
給与収入500万円(給与所得356万円)、資格取得費24万円、勤務必要経費70万円の場合は、以下の通りです。
特定支出合計額 | 24万円 + 65万円(※) = 89万円 ※勤務必要経費は65万円が上限 |
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適用判定基準額 | 144万円 × 1/2 = 72万円 |
特定支出控除額 | 89万円 - 72万円 = 17万円 |
特定支出控除後の給与所得金額 | 356万円 - 17万円 = 339万円 |
給与所得金額は、17万円減って339万円になります。この所得金額をもとに確定申告をすることで、所得税が還付され、住民税も減額されます。
おわりに
いかがでしょうか。「ここまでの支払いはないよ」という人には使えませんが、自己負担が多い人にはお得になる制度です。
なお、確定申告の際には、特定支出に関する明細書および、給与の支払者の証明書の添付が必要です。また、特定支出のすべてについて領収書等を確定申告書に添付するか、または提示する必要があります(1回の乗車等の金額が1000円以下のものを除く)。
ちなみに、確定申告書には「特定支出控除」のための独立した記入欄がありません。確定申告書には、第一表の所得金額等の給与⑥の金額を記入する際、この控除を引いたあとの給与所得金額を書いてください。
- ◆根拠法令等
- 所法57の2、所令167の3~167の5、所規36の5、36の6
- ◆記事本文中の表現は、分かりやすいように簡略化してあります。
- 詳細は、国税庁のサイトを参照(下記URL)。
「給与所得者の特定支出控除について」