Management Column国税局による「査察」とは
査察と税務調査、何が違う?
税務調査は所轄の税務署が行います。所得税や法人税等に規定されている「質問検査権」に基づく任意の調査です(実施には納税者の同意が必要です)。主な目的は納税者の申告漏れの調査です。通常は、事前に「○月○日に調査にうかがいたいのですが、よろしいですか」と税務署から連絡が入ります。
一方、査察は国税局査察部が行います。「国税犯則取締法」に基づく強制的な調査であり、悪質な脱税や脱税額が大きなケースを中心に摘発することが目的です。強制的な臨検、捜索、差押等の権限があり、納税者の同意を必要としないため、事前連絡はありません。
令和4年度 査察の概要
国税庁は、毎年「査察の概要」を報道発表しています。今年も6月に令和4年度分が発表されました。それによると、着手件数145件、処理件数139件。処理件数のうち、検察庁に告発した件数は103件(告発率74.1%)でした。脱税総額(告発分)は100億円で、1件当たりの平均脱税額は9700万円でした。
一審判決が61件出ていて、すべてが有罪判決でした。うち、3人は実刑判決でした(執行猶予は付かず)。
「査察の概要」から、事案ごとの特徴的なケースをみてみましょう。
- ■消費税事案
-
34件が告発されました。そのうち不正受還付事案は16件でした。
<ケース>
- 輸出物品販売場を営む法人が、国内で仕入れた化粧品を外国人観光客に販売したように装い、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上げを計上し、消費税の還付を受けた。
- パワーストーンの仕入れがあったように装い、架空の課税仕入れを計上し、消費税の還付を受けようとした(未遂犯)。
- ■無申告事案
-
15件が告発されました。
<ケース>
- ウェブサイト上で競艇の予想情報を販売する個人事業者が、所得税の申告義務を認識していたにもかかわらず、確定申告書を申告期限までに提出せず、所得税を免れた。
- 相続財産である現金を複数の場所に隠したうえで、相続税の申告書を申告期限までに提出せず、多額の相続税を免れた。
- ■国際事案
-
25件が告発されました。
<ケース>
- 外国法人に対する架空の支払手数料等を計上することで、法人税を免れた。
- 暗号資産の譲渡の主体を自分ではなく外国法人に仮装することで、所得税を免れた。
- ■その他の事案
-
<ケース>
- トレーディングカード販売業者が虚偽の領収書を作成し、架空仕入高を計上するなどの方法により所得を隠し、法人税を免れた。
- SNSを利用して多数の給与所得者を勧誘し、架空の事業所得の損失を計上して給与所得と損益通算することで所得税の還付を受ける不正手段を指南。そのうえで、虚偽の内容の所得税の確定申告書を作成して交付し、多数の給与所得者の所得税を免れさせた。
- 大手企業の従業員という立場を利用して、親族主宰の法人名の架空請求書を下請け業者に送付し、自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませていた。その所得を隠したうえで、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せず、多額の所得税を免れた。