Management Column消費税の仕入税額控除と帳簿の記載事項
日々の実務が忙しいと、帳簿の記載についてもつい省略しがちになってしまいます。しかし、消費税法は仕入税額控除の適用を受けるために必要な事項を帳簿に記載するよう求めています。杓子定規に解釈すれば、「必要事項が記載されていなければ仕入税額控除ができない」ことになります。また、消費税の税率は現在、軽減税率8%と標準税率10%の複数税率であるため、税率ごとに区分して帳簿に記載する必要もあります。
あらためて、仕入税額控除の要件を満たす帳簿についておさらいをしてみましょう。
仕入税額控除の要件となる帳簿への記載事項(課税仕入の場合)
- イ相手方の氏名または名称
- ロ資産または役務の提供を行った年月日
- ハ資産または役務の内容(軽減税率の対象となる資産の場合は、資産の内容および軽減税率対象である旨)
- ニ支払対価の額(消費税額および地方消費税額に相当する額を含む)
帳簿への記載方法
- (1)帳簿と請求書等の記載内容の対応関係
- 請求書等に一品ごとに詳しく記載(たとえば、鮮魚店であれば、「あじ○匹」、「いわし○匹」など)されていても、帳簿には商品の一般的な総称(「魚」または「食料品」)でまとめて記載するなど、仕入控除税額を計算できる程度の記載であれば差し支えありません。
ただし、課税商品と非課税商品がある場合(たとえば、ビールと贈答用ビール券)は、区分して記載する必要があります。
また、商品が軽減税率の対象品目である場合にはその旨を記載する必要があります。具体的には、税率や税率コードを記載する、軽減税率の適用対象を示す記号等を記載するなどの方法があります。 - (2)一取引で複数の種類の商品を購入した場合
- 複数の一般的な総称の商品を2種類以上購入した場合、例えば、文房具と雑貨を購入したときのように、それが経費に属する課税仕入である場合には、「文房具等」などと記載することで差し支えありません。
ただし、課税商品と非課税商品がある場合、標準税率対象商品と軽減税率対象商品がある場合には区分して記載する必要があります。コンビニで食品とそれを入れるビニール袋を買ったときは、教科書的に言えば、区分して帳簿に記載しなければなりません。 - (3)一定期間分の取引のまとめ記載
- 1か月分の取引について、請求書等をまとめて作成する場合には、請求書等に記載すべき課税仕入の年月日については、「○月分」でよいとされています。このような請求書等に基づいて作成する帳簿の課税仕入の年月日は、やはり「○月分」という記載で差し支えありません。
1か月の間に、区分が同一となる商品を複数回購入しているような場合で、その1か月分の請求書等に一回ごとの取引の明細が記載(または添付)されているときには、帳簿の記載にあたって、課税仕入の年月日を「○月分」と記載し、取引金額もその請求書等の合計額を記載することで差し支えありません。 - (4)帳簿に記載すべき氏名または名称
- 課税仕入の相手方については、その「氏名または名称」を帳簿に記載することとされています。たとえば、個人事業者であれば「田中一郎」、法人であれば「株式会社鈴木商店」と記載することが原則です。
ただし、正式な氏名または名称およびそれらの略称が記載されている取引先名簿が備え付けられていることなどにより課税仕入の相手方が特定できる状況にある場合には、「田中」、「鈴木商店」のような略称による記載であっても差し支えありません。 また、屋号等による記載であっても、電話番号が明らかであること等により課税仕入の相手方が特定できる場合には、正式な氏名または名称の記載でなくても差し支えありません。