Management Column免税事業者が課税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整
インボイスの登録申請を行った免税事業者は、9月15日時点で111万者になったとの報道がありました。新たに消費税の課税事業者になった事業者の多くは、簡易課税や小規模事業者の2割特例を使っての申告が予想されますが、それらを選ばない場合は本則課税での申告になります。今回は、免税事業者が課税事業者になった場合で、かつ本則課税で申告をおこなう場合の消費税申告にかかわる話です。
10月1日から課税事業者になったAさん
例として、インボイス登録を機に、10月1日から消費税の課税亊業者となり、本則課税で申告をするAさんがいるとします。Aさんはこれまで免税事業者だったため、使っている会計ソフトに消費税の設定をしていませんでした。10月1日以後の取引について消費税計算ができるよう会計ソフトを設定すると、同日以後の課税取引は「課税売上」や「課税仕入」などと認識されます。本則課税なので、基本的に事業年度終了時までの課税売上にかかる消費税額から、課税仕入にかかる消費税額を差し引いた残りの金額が納付税額になります。
免税期間に仕入れて、課税期間に売り上げた
商品Bは、Aさんが9月20日に仕入れて、10月15日に売り上げた商品です。9月20日時点の仕入は免税事業者であるため、「課税仕入」になりません。しかし、10月15日の時点の売上は課税事業者なので、「課税売上」となります。このまま消費税計算をすると、商品Bについては課税売上だけ計上されることになります。もらった消費税をそっくり納付することになってしまい、消費税の趣旨にも合いません。そこで、このような場合、「免税事業者が課税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整」を行います。
棚卸資産にかかる消費税額の調整
Aさんの場合、9月30日時点で所有していた棚卸資産のうち、免税事業者であった期間に仕入れたものの課税仕入の消費税額を、課税期間の課税仕入の消費税額とみなして仕入税額控除に含めます。「調整」とはこのことを指します。
なお、棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品等で、現に所有しているものを指します。棚卸資産の取得価額には、その棚卸資産の購入金額のほかに、引取運賃や荷造費用、そのほかこれを購入するために要した費用の額などが含まれます。
逆パターンの場合も調整が必要
ところで、ここまで述べたこととは逆に、課税事業者が免税事業者となった場合にも、棚卸資産に係る消費税額の調整が必要になります。翌事業年度が免税事業者となる場合、課税事業者としての課税期間の末日に所有している棚卸資産の課税仕入の消費税額は、その課税期間における仕入控除税額に含めることはできません。
国税庁タックスアンサー:免税事業者が課税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整