Management Column電子取引データを紙に印刷して保存するのは違反…じゃありません
電子帳簿保存法関連のテレビCMをよく視ます。
とりわけインパクトの強いR社のCMでは、こんなセリフが展開されます。
「おっと〇〇!?
取引先から電子発行された請求書を印刷!? ファイルに保存したぞ!?
イエローカード!
電子発行された請求書を紙で保存することは電子帳簿保存法に違反しています!」
さて、この表現を言葉通りに受け取っていいのでしょうか。視聴者がミスリードするのではないかと、筆者はずっと引っ掛かりを感じています。
「紙で保存してはならない」という条文はない
結論から言えば、同法にそのような趣旨の条文はありません。電子データの保存について定めているのは第7条です。
電子取引(※)の取引情報に係る電磁的記録の保存
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
※「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等です。
重要なのは電子取引データの保存
第7条では「電子取引を行った場合は、そのデータ(電磁的記録)を保存しなければならない」と決めています。この場合、何が違反になるのでしょうか。それは「電子取引データを保存しない」ことです。「紙に印刷して保存する」ことは違反ではありません。
電子帳簿保存法では「電子取引のデータを保存すること」が重要なのであり、紙での保存が良いとかダメとか言っているわけではありません。にもかかわらず、「紙で保存することは違反です」と表現するのはおかしな話であり、筆者がミスリードを心配する理由もそこにあります。
国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」では、令和6年からの電子取引のデータ保存について以下のような記述をしています。「データを保存せよ」が主眼であり、紙の保存がダメというものではないことがわかります。
個人事業者・法人の皆さまへ
請求書・領収書・契約書・見積書などの関する電子データを送付受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。 令和5年12月31までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査の際に」提示・提出できるようにしていれば差し支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。