Management Column安心してください。電子帳簿保存法は猶予措置があります
対応完了は3割にとどまる
昨年12月の帝国データバンクのアンケート結果によれば、電子帳簿保存法への対応が完了した企業は3割弱(!)とのこと。それも企業規模が小さいほど対応に遅れがみられるなど、まだまだ対応ができていない事業者が多いのです。
データの保存方法が面倒
電子帳簿保存法への対応を困難にしている理由の一つに、「電子取引データの保存方法」があります。同法によれば、保存したデータについて、①改ざん防止の措置をとる、②「日付・金額・取引先」で検索できるようにする必要があります。
- ①改ざん防止の措置をとる
- データにタイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステム等を利用して授受・保存をするなどの方法があります。また、専用のシステム等の費⽤をかけずに「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」という方法もあります。
- ②「日付・金額・取引先」で検索できる
- こちらも専⽤のシステム等の導入で対応する方法があります。それ以外にも、表計算ソフト等で索引簿を作成する方法や、データのファイル名に「日付・金額・取引先」を付けることで、検索機能が利用できるようにする方法があります。
電子帳簿保存法に対応したシステム等を導入すれば、一定の費用がかかりますが、手間はかかりません。費用をかけずに対応しようとすれば、手間をかけるしかありません。「どっちにしても困る!」と思っている間に1月1日が来てしまった、というのが対応できていない事業者の本音でしょう。
改正により、厳しい要件が大幅に緩和
さて、令和5年度税制改正では、令和6年1月からの電子取引データ保存についても改正が行われています。ここまで述べたような状況を予測したうえでの改正であり、①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し、②新たな猶予措置の整備がされています。
- ①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し
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イ.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。
つまり、基準期間の売上高が5000万円以下なら、データの検索機能がなくてもかまいません。また、電子取引データをプリントアウトした書面を、整然とした状態で提示・提出することができる場合も同様です。
- ②新たな猶予措置の整備(改ざん防止も検索機能も不要)
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次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、データの改ざん防⽌や検索機能などは不要となり、電子取引データを単に保存しておくだけでよいとされました。
イ.保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ.税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
「相当の理由」とは
ところで、②のイにある「相当の理由」とはなんでしょうか。国税庁は「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」問61の回答として、次のように書いています。
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、 その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。
したがって、経済的な余裕がなく電帳法対応ソフトを導入できていないとか、人手不足で電帳法対応にあたる従業員が確保できないなども「相当の理由」にあたると考えられています。
電子帳簿保存法への対応ができていない事業者のみなさん。とりあえず、電子取引データの保存だけはしておきましょう。改ざん防止や検索機能については、それができるよう目指しつつ…。
国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年4月)」 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」