Management Column2025年度税制改正へ向けた、各省庁の要望とは?
例年だと12月中旬に2025年度税制改正大綱が公表されていますが、今年は「103万円の壁の見直し」が議論されるなど協議が続いているようです。そこで各省庁からの要望を見てみると、今回の税制改正では家計支援策と企業の成長促進などが大きな柱となっています。一方で、政府の財政健全化目標との整合性も問われており、減税と増税のバランスが焦点のようです。以下では、企業や個人に大きな影響を与える可能性のある主要な要望内容を紹介します。
1.物価高騰対策と家計支援
総務省と厚生労働省を中心に、物価高騰に直面する家計を支援するための税制措置が要望されています。また、住宅取得支援策として、住宅ローン減税等に係る所要の措置、ガソリン減税など、適用要件の緩和が提案されています。これらの措置により、実質的な可処分所得の増加を図る狙いがあります。
■住宅ローン減税等に係る所要の措置
2.企業の成長を後押しする税制措置
経済産業省が中心となり、企業の成長を後押しする税制措置の拡充を求めています。賃上げ促進税制については、現行の税額控除率のさらなる引き上げや、適用要件の見直しが検討されています。特に、中小企業向けの支援措置を手厚くする方向性が示されており、地域経済の活性化にも配慮した内容となっています。
■令和7 年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント
3.金融・資産関連の税制改正要望
金融庁では資産所得倍増プランの実現に向けて、NISAの利便性向上、企業年金・個人年金制度の見直しを要望しています。また、国際金融センター実現に向け、クロスボーダー投資の活性化に向けた税制改正や、生命保険料控除制度の拡充などが提案されています。
■NISA の利便性向上等
■金融庁の令和7(2025)年度税制改正要望における主な要望項目
- 1:「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現
- ・NISAの利便性向上等
- ・企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置〔厚生労働省主担〕
- ・上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し
- ・金融所得課税の一体化〔農林水産省・経済産業省が共同要望〕
- 2:「世界・アジアの国際金融ハブ」としての国際金融センターの実現
- ・クロスボーダー投資の活性化に向けた租税条約等の手続の見直し
- 3:安心な国民生活の実現
- ・生命保険料控除制度の拡充〔農林水産省・厚生労働省・経済産業省・こども家庭庁が共同要望〕
- ・火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実
※本稿は2024年8月時点での各省庁からの要望内容をまとめたものです。実際の税制改正大綱では、内容が変更される可能性がありますので、ご了承ください。