5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 医業収入総額の確認
5-6 医業仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 資産との区分が必要となる費用
5-12 交際費とその他周辺科目との区分
5-13 寄付金の取扱い
5-14 個人と法人間での建物貸借時の留意点
5-15 生命保険料
5-16 諸会費の取扱い(旅費・学会費等)
5-17 福利厚生費
5-18 リース料の取扱い
5-19 個人開業医の家事関連費
5-20 個人開業医の特例適用(措置法第26条)
5-21 決算方針書
5-22 決算確認報告書
5-23 決算自己チェック表
5-24 書面添付チェックリスト
5-25 消費税の確認ポイント
5-26 源泉所得税の確認ポイント
1   貸倒引当金の計上

引当金とは、将来予測される支出に備えて、あらかじめその費用を見積計上するものである。引当金は日常の会計処理では発生しないため決算作業で忘れずに引当処理する必要がある。とりわけ、決算処理において計上すべきは、税務上一定条件の下損金算入可能な貸倒引当金である。取引先などの倒産などにより、翌期以降に債権が回収できない恐れがある場合に、事前に予想した回収不能額を費用計上しておくというものである。

決算においては、
貸倒引当金繰入 ××  貸倒引当金 ××
として仕訳を行う。

医療法人における債権の大部分は社会保険診療報酬の保険未収入金であるため、これらについて貸倒れによる損失が発生することはほぼないが、貸倒引当金を設定することにより一定の金額を損金に算入することができる。貸倒引当金については、その債権の種類により個別評価貸倒引当金または一括評価貸倒引当金を設定することができ、その合計額が貸倒引当金繰入額として損金算入される。

貸倒引当金とは売掛金・貸付金などの金銭債権のうち、将来において回収できなくなる恐れがあるものについて、あらかじめ一定の金額を当期の費用に計上しておくというものです。税法上、過去の実績率や業種によって計上できる限度額が定められています。

引当金には、賞与引当金・退職給付引当金など他にも引当金があるが、現在の税法では主なものとして貸倒引当金しか認められていない。しかし、認められていないからといって、計上してはいけないということではない。引当金を計上しても税法上、費用として認められないということだけである。
株主等に対する正しい情報開示という観点からいえば引当金を計上している方が正しい情報開示になるといえる。


2   貸倒損失計上時の留意点

(1)貸倒損失の取扱い
回収の努力をしたにもかかわらず回収できない未収入金については、貸倒損失に計上できる場合がある。しかし、回収の努力が不十分なうちに放棄した医業未収入金については、寄付金とみなされ、必要経費にならないことがある。
例えば、入院患者の窓口負担金について回収見込みがないため貸倒損失計上したが、保証人の返済能力等を確認するなどの手続きをとるまでは損失計上はできない。

(2)貸倒損失の概要

(3)貸倒損失の判定
@ 患者の支払能力から見て全額の回収不能が明らかになった場合、その時点で貸倒れ損失となる。
A 相当期間、継続的に債務超過の状態にあり返済不能と認められる場合で、書面による債務免除を通知した場合は、その通知をした時点でその金額が貸倒損失となる。具体的に診療収入にかかわる未収入金については、以下のような例が考えられる。

生活困窮者に対するもの
この場合、生活保護法や行き倒れに関して地方公共団体が行旅病人及び行旅死亡人取扱法により負担を引き受けることになるので、法律上の支払いがない場合には貸倒損失としてよい。

(4)貸倒損失の損金算入
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