5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 医業収入総額の確認
5-6 医業仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 資産との区分が必要となる費用
5-12 交際費とその他周辺科目との区分
5-13 寄付金の取扱い
5-14 個人と法人間での建物貸借時の留意点
5-15 生命保険料
5-16 諸会費の取扱い(旅費・学会費等)
5-17 福利厚生費
5-18 リース料の取扱い
5-19 個人開業医の家事関連費
5-20 個人開業医の特例適用(措置法第26条)
5-21 決算方針書
5-22 決算確認報告書
5-23 決算自己チェック表
5-24 書面添付チェックリスト
5-25 消費税の確認ポイント
5-26 源泉所得税の確認ポイント
1   留意すべき資本的支出と修繕費の区分

(1)修繕費
修繕費は、固定資産の現状を回復し、原能力を維持するための費用とされていますが、多くの場合修繕は改良を伴うものであり、費用となるか資産となるかの区分が必ずしも明確ではありません。
修繕費となるか、固定資産の取得価額に加算する資本的支出となるかは、いつも調査で問題となる項目です。


(2)資本的支出
資本的支出となる金額の計算は、使用可能期間を延長させる場合と、価値を増加させる場合とに応じて次のように計算します。
その支出の効果が両方に及ぶ場合は、いずれか多い金額を資本的支出の額とします。



2   資本的支出と修繕費の区分の具体例

(1)性能アップ又は能力増強
機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合に、通常の取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額は、資本的支出に該当します。

(2)使用可能期間の延長又は価額の増加
建物屋上の修理にあたり、防水性の高い長期間劣化しない品質の良いものに変えた場合に、通常の修理に要する費用の額を超える部分の金額は、資本的支出に該当します。
また、建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分にかかる費用は資本的支出に該当します。

(3)改造及び撤去費用
倉庫として使用していた建物の一部を事務所に改造し、間仕切り壁の撤去費用と改造費用を支出した場合は、用途変更のために直接要した改造費用と、間仕切り撤去費用のうち新たな事務所部分に係る費用を合計した金額が資本的支出に該当します。

(4)賃借資産の資本的支出
貸主の了承を得て借りていた機械の改造を行い、その負担額を支出した場合、改造費用による使用収益の享受は賃借人となりますから、自己資産と同様に取り扱われ、修繕費となるか資本的支出となるかの判定は一般の場合と同じ方法で行うこととなります。

(5)耐用年数を経過した資産の改造費用
耐用年数が経過している資産について修理、改良をした場合、使用可能期間を延長させる支出であるから全て資本的支出であるという考え方がありますが、費用の支出が事業のうえで必要なものである限り、修繕費となるか資本的支出となるかは、その資産の耐用年数が経過しているかどうかとは関係ないものと考えられます。
したがって、その修理、改良等のために支出した費用の額の修繕費と資本的支出の区分については、一般の例によりその判定を行なうこととなります。


3   修繕費に係るその他注意点

(1)現物・現場での確認
調査の際、修繕の内容を聞かれますが、具体的に説明するためにも現場の確認はしておくべきです。

(2)修理の前後の状況の把握・写真等の記録保管
見積書、請求書などの書類だけでなく修理の前後の写真を撮っておけば説明もしやすく、調査官にも早く理解してもらえます。

(3)修繕費と資本的支出の区分が明確でないときの区分方法
次のとおり処理します。

資本的支出と修繕費の形式的区分基準



4   保険料と積立金の区分

保険の種類によっては、保険料の全部又は一部が損金となり、また福利厚生の一環としても活用できることから、会社で役員や従業員に対する保険を掛けるケースがあります。
生命保険については、保険の種類や契約者、被保険者及び保険金受取人を誰にするかにより、保険料あるいは受取保険金の税務上の取扱いが異なってきますので、下記事項の確認が必要になります。

@ 保険証券を確認します。
(保険契約者、被保険者、保険金受取人、保障額、保険料、保険種類、特約)

A 支払保険料の経理処理
損金とする部分と資産(保険積立金、前払費用等)計上部分に区分けされているか確認します。

参考
法人の場合は役員を含めた保険料損金算入の記載が主として法人税基本通達上定められており、実質的には節税を目的とした保険商品が多数存在します。
これに対し個人の場合は、院長本人を被保険者とした場合には、生命保険料控除として最大10万円の所得控除が受けられるのみです。ただし、個人経営でも従業員を被保険者とした場合、または医療法人が理事または従業員を被保険者とした場合には、一定の場合保険料を必要経費または損金に算入することが認められています。

個人経営で従業員を被保険者とした場合、所得税法上明確な規定はありませんが、法人税の規定に準じて取り扱うことで差し障りないとされています。ただし個人経営の場合本人の利殖目的でなく、事業の遂行上明らかなものでなければならないとされています。
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