病医院では、院長などの出身大学や医局に対して寄附をするケースがよくあります。しかし、寄附金は、個人と法人とその取扱いが若干、異なりますので、注意が必要です。また、この時期は、ご子弟の医学部入学に際して発生する寄附金なども出てきます。寄附金の制度を有効に活用するポイントおよび留意点は以下の通りです。
寄附金はその性質上、反対給付がありませんので、原則として必要経費や損金算入とすることはできません。しかし、診療所等の事業を遂行する上で必要な寄附金もあります。そういう場合は、所得税・法人税の負担を不当に軽減させない範囲において、一定の制限を設けて、それぞれ必要経費または損金算入を認めています。
この場合、寄附金とは、税法上、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、金銭その他の資産または経済的利益の贈与、無償の供与のことをいいます。寄附金の額については、金銭の場合は金銭の額、金銭以外の資産の場合は贈与時の価額、経済的利益は供与時の価額とされます(法人税法37条(7)(8))。
支出した金額が寄附金に該当するか否かは、名義の如何にかかわらず、その支出の実態により判断することになります。 |
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@ 当医療法人の理事長の出身大学への寄付金 |
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当医療法人の理事長の出身大学で、施設等の拡充を行うことになりました。その後援会に対して負担する寄附金の取り扱いについて。
寄附金は法人税法では、損金算入に一定の限度を設けています。つまり、法人が各事業年度で支出した寄附金のうち、国または地方公共団体に対する寄附金(その寄附によって設けられた施設を寄附した者が専属的に利用できること。その他特別の利益が寄附した者に及ぶと認められる場合を除く)及び指定寄附金については、全額損金算入されます。しかし、一般の寄附金、特定公益増進法人等及び認定特定非営利活動法人に対する寄附金については、一定限度を超える部分の金額は損金の額に算入できません。
国等に対する寄附金とは、直接国等に寄附するものをいいます。国立または公立の学校等に施設の建設または拡張等の目的を持って設立された後援会等に対する寄附金であって、その目的である施設が完成後、遅滞なく国等に帰属することが明らかな場合はその寄附は国等に対する寄附金として取扱われます(基通9-4-3)。しかし、理事長の出身校という理由では、法人役員等が個人として負担すべきものです。したがって、国等に対する寄附であろうと、一般の寄附であろうと、本来負担すべき者に対する「給与」となり、損金算入することはできません(基通9-4-2の2)。
つまり、本件の場合、その支出先が国等に対する寄附金であっても、当該医療法人が当該学校に寄附する業務上の理由がないのであれば、理事長個人が負担すべき寄附金と考えられます(この場合、理事長個人の特定寄附金として確定申告することができます)。
なお、理事長個人が負担すべきか否かは、その法人の業務上、法人が負担することが合理的か否かにより判断することになります。医療法人と大学医学部間に人的な交流などの事業遂行上合理的理由があれば、法人が負担しても問題はないと判断されます。
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A 町内会や子供会への寄付金 |
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診療所所在地の町内で行われる夏祭りに対する町内会や子供会への寄附について。
必要経費に算入される寄附金とは、事業遂行上直接の必要性に基づくもので、かつ、その支出が実際上拒絶できなかったと認められる部分の金額とされています。
つぎに寄附金控除の対象となる寄附金は、国または地方公共団体に対するもの及び指定寄附金等の特定寄附金に、原則として限定されています。
町内会等への寄附が事業遂行上とくに負担しなければならないものであれば、必要経費になります。 |
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B 子女等の学校入学に関してする寄付金 |
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長女の私立医大入学の際の寄附金は、寄附金控除の対象となりうるか。
子女等の「学校入学に関してする寄附金」は特定寄附金には該当せず、寄附金控除を受けることはできません。
この「学校入学に関してする寄附金」は、その寄附が条件とされ、入学との相当因果関係があり、入学願書受付開始から、その入学の日の帰属する年内に行った寄附がすべて含まれます。さらに入学する学校との関連する団体及び入学辞退等を行った場合の寄附も含まれます。「学校入学に関してする寄附金」は、その納入がない限り入学を許されないこととされているものをいいます。
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